02
――時刻は夜8時30分。
『はあ……、やっぱり行きたくない……』
「今更文句言うなよ……、あ、おーい!ヤマトー!」
同じマンションに住んでいる俺と太一は一緒に待ち合わせの場所まで向かっていた。
マンションを降りてすぐ、太一が下でよく知っている人物の名前を呼ぶ。
『はあ……』
「神ももう諦めろって」
「そうそう、文句言ってるのお前だけだぜ?」
『うるさい、馬鹿太一』
合流し、3人で第三台場へと向かう。
そこが怖いというより、行くまでの道のほうが怖いからイヤなんだ。
「懐中電灯は?誰か持ってきたか?」
『いや?持ってきてない。てっきり太一が持ってくるもんだと……』
「言われてないから持ってきてねーよ」
『言い出した本人だろ?』
「そんなの関係ないだろ!?」
「まあまあ2人共、無きゃダメなわけじゃないんだからさ」
喧嘩を始めそうな俺と太一を宥めながら、歩みを進める。
別に思っていたよりも暗くなかったし、ヤマトや太一も一緒だからそれほど怖くはなかったが、それも太一の一言でなくなった。
「なんかこいう場所で歩いてる時とかにさ」
『あ、ああ……』
「変なおじさんとかが追いかけて来たら怖いよな」
『へ、変なこと言うな!』
俺の反応におかしそうに笑う太一に腹立ちながら、多分この中で一番冷静なヤマトへと視線を向ける。
この馬鹿太一に一言言って欲しかったからだ。
だが……
『ヤマトもなんか……ん?ヤマト?』
隣を歩いていたはずのヤマトの姿はどこにもなく……。
「わっ!!」
『うわっ!!』
後ろから聞こえてきた声に驚き悲鳴をあげる。
なんだと後ろを振り向くと、右には腹を抱えながら肩を震わせている太一と、その隣でおかしそうに笑うヤマトの姿があった。
『ヤマト……』
「悪い悪い、お前があまりにもビビってたからついさ」
『ふんっ!』
「いっ!!」
遠慮無くヤマトの鳩尾にアッパーを入れる。
普段ヤマトにこんなことしたことないが、これはもう自業自得というやつだろう。
「うわあ……痛そう……」
『今度俺を脅かそうとしてみろ、お前達の恥ずかしい写真を学校中にばら撒くからな』
「目が本気じゃねーか……」
後ろの2人を置いて先に第三台場へと向かう。
すでに苛立ちのほうが勝って怖さはほとんど無くなっていた。