恐怖の3日目
「なあ、2人共……、今日の夜暇か?」
「なんだよ急に……」
教室の窓際、昼休みだと生徒が賑わう中、俺と太一ヤマトは騒ぐ生徒に混じらず教室でくだらない雑談をしていた。
そんななか、唐突に質問してきた太一にヤマトが答える。
「いや、さ……夏だろ?」
『夏だな』
「だから、ほら」
「言いたい事があるならハッキリ言えよな」
しびれを切らしたヤマトがムスッとしながら言う。
その発言に、太一は「じゃあ絶対断るなよ?」なんてわがままなことを言いながらゆっくりと口を開いた。
「肝試ししようぜ?」
『馬鹿なんじゃないか?』
「なんだよ神、怖いのか?」
『馬・鹿・な・ん・じゃ・な・い・か?』
太一の言葉に何度も同じ返事を返す。
肝試しなんて、絶対に行きたくない。
「まあまあ、神も落ち着けって。太一もなんでまたいきなり……」
「昨日テレビでホラー特番やっててさ、思いついたんだよ」
「別に俺達じゃなくても、ヒカリちゃんとか誘えばいいだろ?妹なんだから」
「頼んだらあいつ、「絶対ヤダ!」って言ってきたからさ」
『正しい。ヒカリちゃんは正しい』
「だから誘ったんだよ。3人なら怖くないだろ?」
2人も3人も同じだろうと言うが、1人増えるだけでも全然違うと言い張る太一に小さくため息を吐きヤマトに視線を向ける。
ヤマトならきっと断ってくれるだろうと信じて……
「肝試しって言ってもどこ行くんだよ」
「お、いい質問じゃねーか」
……ノリ気だったのか。
多少裏切られた感も拭えぬまま、話だけは聞いておく。
好き放題言わせたあと、断ることも出来るからな。
「第三台場だよ」
『第三台場……ああ、あそこか』
「ほら、あそこ夜だと暗くて雰囲気あるだろ?流石に学校忍びこむなんて出来ねーからさ」
「確かにな……」
「まあ、肝試しつーよりむしろ夜景見に行くつもりでさ!行こうぜ!」
そう言って連れて行くつもりなのか……。
ヤマトはどう思っているのかと、横目で確認すると
「神はどうする?」
『ん!?』
予想外に質問されたから、行きたくないという意思表示も含めて手を横に降る。
むしろ即座に反応したのは太一で……
「神は肝試しにもいけない大の怖がりだって光子郎に言いつけてもいいんだぜ?」
『脅しか……!』
――……というわけで、半ば無理矢理俺達は肝試しをすることになったわけだった。