02
「神さーん!」
『コウちゃん!』
走ってきたのは光子郎で、近くまで来た途端神は素早く光子郎の近くまで移動した。
毎回思うけど、光子郎が関わるときだけやたら機敏なのはなんなんだ…。
「すみません…、戸締まり長引いちゃって…。だいぶ待たせましたよね?」
『いや、気にするな。じゃあ帰るか』
「ええ、……あれ、太一さん達まだいたんですか?」
「最初からいたけどな。な、ヤマト」
「ああ、ずっとここにいたけど」
そんな俺達2人なんてお構いなしに神は傘を広げると迷わず光子郎に入るよう促した。
俺とヤマトにはあんなに拒絶してたのにだ。
「すみません、僕が傘を忘れなければ待たせることもなかったのに……」
『久しぶりに一緒に帰れるだけで嬉しいからいいんだ』
「おい 神、肩すごい濡れてるぞ」
『うるさい黙れ』
折角教えてやったのにこれだ。
光子郎が濡れないようにと傘のほとんど光子郎に向けているから神の肩はずぶ濡れ。
だが本人は満足そうだ。
『じゃあな、2人共。雨…止むといいな』
最後に捨て台詞まで残して2人で帰っていく様子を俺とヤマトは見ているだけ。
さっきまで3人なら楽しいもんな!みたいな空気どこいった……。
「本当に帰ってったな…、神のやつ」
ヤマトが呟くように言うと、お互い顔を合わせてまた盛大な溜息。
そして雨は止むことはなくそれからヤマトと2人で虚しく待つしかなかった。
*************
『悲惨だな』
「「……」」
『あれから1時間経ったんだが…』
そう、神が裏切ってから1時間。
俺とヤマトはもういっそ濡れて帰ってしまおうと走りだしたが最後全身ずぶ濡れ。
雨で滑って転びそうになったところを、前を走っていヤマトを道連れにし2人で転倒。
制服は泥で汚れ、このまま帰ることもできずまた同じ場所に避難したのがかれこれ30分前の出来事である。
『そ、それにしても…!お前たち顔……ぷっ、泥だらけだぞ…!ははっ!』
「おい、ヤマトどう思う」
「神の顔を俺達と同じにしてやりたいな」
「珍しく気が合うじゃねーか」
『おい、そんなことしたら傘入れてやらないぞ?折角コウちゃんを送ってから戻ってきてやったっていうのに……』
いや、1時間経ってるからとか。
光子郎送ったあとといいつつちゃっかり着替えてるじゃねーかとか色々言いたいことがあるが、神の機嫌を損ねないよう押し黙る。
全てはこいつの手にある傘のため…。
『入れてほしいか?』
「「入れてください」」
『素直でよろしい。ほら帰るぞ』
神が持ってきた傘を差しながら帰路を歩く。
ほらと俺とヤマトにタオルを投げかけるとまたも人の顔を見るなり笑いをこらえる神。
「なんでタオルまで…」
『ヤマトはともかく、太一なら諦めて走り出しそうだと思って…。まあ、転倒するなんて想像してなかったがな』
と、また笑いをこらえながら話す神に、読まれてると誤魔化すようタオルで顔を拭く。
『面白いから写真撮っておこう』
「ちょっ、馬鹿!やめろ!」
『ヤマトこれ空に送っていいか?』
「ホント洒落にならないからな、それ!」
なんて帰り道ふざけあっていると、1人が滑ってみ2人巻き込まれ盛大に転ぶ。
『傘の意味ないじゃないか…』
「また太一だろ、転んだの……」
「俺のせいにすんなよ!」
結局3人泥だけで帰って、家について早々母さんに怒られて。
そんな俺達3人の梅雨の出来事……。