ついてない5日目
ーー雨…。
昨日も雨、今日も雨、そして予報では明日も…。
これだから梅雨は嫌いだ。
「あ…、太一……」
「ヤマト?」
曇り空から遠慮なく振り続ける雨を眺めていたら隣に人の気配がして視線を向けるとそこにいたのはヤマトだった。
そこから動こうとしないところを見るとどうやら雨宿りに来たらしい。
「珍しいな、部活は?」
「ホントは外練だったけどこの雨で中止になったんだよ」
「災難だな…。俺ももう少しでバンドの練習があるのに傘忘れてさ」
「ヤマトもか!俺も今日に限って忘れてさー…。朝は降ってなかったから余裕ぶっこいてたらこれだよ」
2人して大きな溜息を吐く。
こんな雨だからほとんどの生徒は下校していて、こんなことなら部活の友達に入れてもらえばよかったと後悔した。
「ん?」
「どうしたんだよ」
「足音聞こえないか?」
「どうせ先生だろ?」
と言ってもヤマトは足音の聞こえてる方をじっと見つめたまま。
俺も釣られて一緒にそこをじっと見て、その相手が誰なのか待っていると来たのは神だった。
『あ』
「なんだ、神かよ」
『悪かったな、俺で』
神はそう言うと、俺の左隣に来ると空を見上げて黙ってしまう。
右からヤマト、俺、神というもはやお馴染みの組合せだ。
隣に来たということは神も傘を忘れたんだろう。
現にその場から帰る様子もない。
「お互い災難だな……」
「しかもこの3人って言うのがまた…」
『だが、1人で待つよりいい。3人なら楽しいじゃないか』
「楽しいかー?」
こんな土砂降りじゃあ家にも帰れやしない。
でも、確かに神の言う通りこの状況に1人じゃなくてよかったと思っている自分もいて。
「逆にヤマトと神でよかったぜ。実家のような安心感」
「なんだよそれ」
3人で笑っていると、なんだか雨も悪くない気がして、たまにはこんな日があってもいいななんて……。
『あ』
「どうした?神……あっ」
「傘……」
笑い合ってたのもほんの一瞬。
いきなり神が笑うのをやめたと思ったら普通の顔してカバンから折り畳み傘を出したもんだから思わず俺とヤマトも笑うのやめ真顔になる。
おい、いま完全に持ってない雰囲気だっただろ
「傘持ってんのかよ!」
『持ってるぞ?ん……?お前たち傘……』
「持ってないからここにいるんだろ?」
ヤマトが冷静さを装い神に聞くと、帰ってきたのは予想外の答え。
『なんだ、てっきり誰か待ってるのかと……なんか…悪いな』
「悪いって思ってたら笑わねーだろ!入れろ、その傘!家隣なんだから!」
「あ、ズルいぞ太一!」
『ちょっと何言ってるかわからないな』
ヤマトと俺でどっちが傘に入れてもらうか揉めている中、裏切り者の神はそれを見て馬鹿にしたように笑っている。
なんなら無理やり入ってやろうか。
『お前たち落ち着け。そんな争いをしたところで入れるわけないんだから』
「「そこは入れろよ!」」
『全く…。いいか、人にはそれぞれ優先順位というものがあってだな…』
神がいい聞かせるように話し始めたと同時にまたも校舎の方から足音が聞こえる。
音を聞く限り走っているようで、どんどんこちらに近づいてきていた。
『あ、きた……』
「来たって……」