「太一さん達ってちゃんと気持ちとか伝え合ってるの?」
『え?』
ほんの些細な疑問。
太一さんと神君が付き合ってるのは知っていて、ラブラブバカップルなのも知っていた。
だけど、一度もお互いがお互いを好きだと言っているところを見たことがないから、聞いてみただけだった。
ほんのちょっとの好奇心。
「そう言われると、あんまりねーな……」
『最後に言ったのはいつだったか……』
とは言いつつも、繋いでいる手は離さない辺り相当だと思う。
隠すつもりがないんじゃないかしら、むしろ無意識に見せつけているのならいますぐ繋がれた手を無理やりひっぺがしてやるのに。
「どうして言わないの?」
『どうしてって言われても、な……』
「好きなんでしょ?たくさん言えばいいじゃない」
もちろん他人事だから言えるだけだけど。
私がそう言うと、神君は照れたように空いている手で頬を掻いた。
その様子を隣で太一さんが赤くなりながらじっと見ている。
『俺は……、そうだな。太一が好きだ……』
「……それじゃあ俺も好きだ」
『それじゃあ?なんだそれじゃあって……』
太一さんの返しに、納得がいかないと拗ねたような顔で問いかける神君。
でも、太一さんは気にしないとでも言うようにそっぽを向いている。
怒ってるくせにやっぱり手は離さないのね。
『お前は違ったのか?俺だけだったなんて……酷いじゃないか……』
「酷いのはどっちだよ!俺のこと好きって……その程度だったなんてガッカリだ……」
『違う、そうじゃない……。ホントは……!』
「ホントは……?」
『あ、愛してるさ……』
「俺もだぜ、神!」
私のことなんてまるでアウトオブ眼中の2人に、なにも言わずその場から立ち去る。
どうせ私がいきなりいなくなっても、この2人は自分たちの世界に入っちゃってるから気付きもしないだろうし。
「ホント、困ったバカップルなんだから」
[もう勝手にやってれば?]
それじゃ、俺も好き。**