2匹目:オウジサマの慰め





「あぁぁぁぁぁぁ!!!私きっと死ぬ!!死ぬんだ!!!ヒバリさんにトンファーに滅多打ちにされて!!!死ぬんだ!!!うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

「名前ちゃん…」

「うるせーなアホ女」

「まぁまぁ名前、大丈夫だって」

「隼人くん超ムカつく!!!」




私の席にいつもの三人が集まって、ツナは眉を下げて私にかける言葉に迷い、隼人くんは舌打ちしながら面倒くさそうにし、武は笑いながら私を宥める。そして私は三人に囲まれてただ喚いた。
さっきも声に出して言ったけど隼人くん超ムカつく!!他人事だと思って!!だったらさっき先生に指名された時に隼人くんがやれば良かったじゃん!!




「……私自慢じゃないけどバカじゃん」

「えっ…!」

「そーだな」

「んー…」

「そんな私が、デスクワークなんてこなせると思うの…?」

「「「………」」」

「きっとミスして咬み殺される…!」




私はまたうわぁぁぁぁぁと机に頭を打ち付ける。すると少し間をおいて頭上で隼人くんの小さな舌打ちが聞こえた。なんで隼人くんかって分かるかっていうとこんな時に舌打ちするのなんて隼人くんしかいないからだ。
この銀髪爆発しねーかな。果てろ。




「ボコボコに殴られんのかな…。
一応女の子なのに…。顔、痣とか傷だらけになるのかな…」

「……」

「……」

「ん〜…」




ぐすっ、ぐすっ、
ついに私は本気で泣き出した。
だって本当に嫌だ。痛い思いするのも、ビクビクしながら放課後を過ごすのも、顔に傷が残るのも。
普段は周りにまるで男のように扱われているけど、それでも私だって一応は女の子なのに…。

ネガティブループにずっぽりとはまったその時だった。
不意にぽんっと頭の上に何かが乗った。
そしてそのまま私の頭を荒っぽくぐしゃぐしゃにする。
それは、




「わ、わっ…!」

「元気出せよー名前!」




武の手だった。
その手は一通り私の頭を掻き回すと、今度はころっと手つきを変えて優しく滑らせるように撫でてくる。
少しだけ驚いて目を瞬かせていると、武はそんな私を見て太陽のようににかっと笑った。




「ヒバリのご機嫌損ねてやばくなったら走って野球部のとこまで来いよ!」

「………」

「俺がなんとかしてやるからさ」

「…武、」

「な?」

「……うん」




武にそう言われると本当に大丈夫だと思えるから不思議だ。

そしていつの間にか私の涙は引っ込んでいて、隼人くんは呆れたような顔をしてて、ツナは眉を下げて微笑み私を見下ろしていた。
…三人ともごめんね。決まっちゃったものはしょうがないよね。私頑張るよ。




「それにもし傷モノになっても俺が嫁にもらってやるのなー」

「え!?」

「なぁ!?山本!?」

「なに言ってんだこの野球バカ!」








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