Uno
10年前、幼いながらに感じていた醜い嫉妬心。
ボスへの狂っていると言っても良い程の強い想い。
それが恋心だと気がついたのは、ほんの数年前だった。
ある日スクアーロは言った。
「お前よぉ、普段はこっちが気の抜けちまいそうな程能天気なツラしてっけどよぉ
ボスの部屋から出てきた女を見るときの目つき、とんでもねぇぞぉ」
「は?」
「ガキのくせして一丁前に嫉妬ってやつかぁ?
女ってのは恐ろしいぜぇ」
「ガキじゃないし」
「充分ガキだぁ」
会話はそこで終わった。
スクアーロはその後何も言わずに剣の手入れをしていたし、私もなにも言わずに読んでいた本のページを捲った。
その時のスクアーロの言葉で、いや、それよりも少し前から、気づいていた。
私はボスに対して恋愛感情を抱いている、と。
最初こそは父親をとられたような感覚からくる嫉妬心なのだと思っていた。
しかしそれは違うんだと確信をもったのは何故だったか。
はっきりとは覚えてはいないが、確実に違うと思った。私のこのボスに対する気持ちは、親愛だなんて生易しいものじゃない。もっとドロドロとしていて、醜くて…、
あぁそうだ、そういえば思い出した、あそこで会話は終わったと思っていたけど違った。
私、暫くしてからスクアーロに言ったんだ。
「スクアーロ、私ね
ボスの部屋から出てくるオンナを見るたんびに…」
殺したくなるんだ
(それは少女の混じり気のない殺意)