期待は勝手に絶望を生むから。




アルフェイとサル→フェイ
※捏造注意





 彼を見送ってからの日々は変わらないと思っていたのに突然の豪雨で前が見えないようになったことに驚いた。そこで僕は、彼の存在をずっと見つめていたい、どんな時もそうであったことに気付かされた。時折ふざけあって大人の様に僕のことをサリュー、と呼んでいた声が今でも頭の中でリフレインする。これはなんだっけ、そう思案すれば答は世間一般で捉えれば恋、そのものだった。
 うつろいゆく空を眺めながら送りだしたかれを思う。記憶を消してしまったこと、それは計画の最奥であり要であったけれども、実際どうだろう、こんなに胸につかえるなんて。今、彼は誰を思ってあのふざけあいをしているのだろう。誰を思って明日を生きようとしているのだろう。覚えていたい。そう、小さく主張した彼の声がこびりついて余計な希望を刷り込んでいる。期待してはいけない、期待は勝手に絶望を生むから。

 僕は、僕等は、幸せをどうして見逃してしまうんだろう。はっきりと形になぜしなかったのだろう。失って知る痛みをどうして予感しなかったのだろう。彼の心はもう僕へ向いていない、出会ってしまったんだ、そして形にしてしまったんだ。溢れる涙の意味を与えられる頃には、全てが終わっているのだろう。
 「僕はね、サル、彼が好きなんだ」
 サッカーを命令で行っていた無機質な男。けれども、フェイと同じように変わっていって、サッカーを、そうして他の誰かを愛することを知った男。戦いの中で交わること、それで変わって行くなんて思っていなかった、恋という現象が。
 その告白にどう答えたらいいか分からずにいつもの笑い顔をはりつけて、そう、とだけ返事をした。ああ、気づいてしまったのだ。その形ないものに。

 ぼくらの前途はわからない。けれども、あの頃のような関係には戻れない。
 全てが終わった頃、彼は愛を始めるのだろう。気兼ねなく触れ合える関係でもって。豪雨でも構わない、そこに愛があるのだから。

 そうして僕は、未だ豪雨の中に取り残されたままに、明日を迎える。変えられない明日を。







雨天決行

スコールが反響する。


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