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アンコール・リバイバル

恥ずかしながら私、死にました。死因は不明です。目が覚めたら私の肉体は山に遺棄されておりました。大事に大事に扱ってきた私の肉体は手足があらぬ方向に曲がっております。
ああ、神様!何故私は死んだのでしょうか!見てくれが悪いにもかかわらず一所懸命生きておりましたのになんという仕打ち!
日頃の恨みつらみをグチグチと語っておりますと、殿方が驚愕の表情でこちらを見ているのに気づきました。殿方は着物に下駄というトレッキングには到底向かない格好で私と私の屍を交互に見ております。俗に言う幽霊である私が見えるとは!
程なくして殿方と私の視線がぶつかりました。私は幼少より母親に言われ続けた『とりあえず笑っとけ』という言葉を思い出し実践してみます。にっこり!

「うわあああ」

殿方は悲鳴を上げて尻餅をつきました。笑顔に悲鳴をあげられるとは心外です。屍よりも笑顔の方が怖いなんて!
私はキッと殿方を睨みつけました。気合いで火の玉を三つ出現させることにも成功いたしました。
これぞ乙女の底力!乙女の硝子のハートを傷つけた罪は重いのです。うらめし!

「あはは」

殿方は笑いだしました。ここは怯えるところでしょう。笑うところが違います。場の空気が読めないのでしょうか。
それにもかかわらず、談笑するような軽やかな笑いに私は心を射抜かれてしまいました。私は生前から爽やかな異性が好みのタイプなのです。
この殿方の笑顔はそれはもう爽やかで私は天に召されてしまいそうでした。

「幽霊さん、どうして此処で死んでいるんだい?」

爽やかな笑みはそのままに、殿方は私に語りかけました。笑顔は満点でございます。
しかし質問の答えはわかりません。気づけば此処にいたことしか知らないのです。逆に教えて欲しいくらいでございます。私は首を横にふりました。

「じゃあ私と同じだ」

殿方は肩を竦めて言います。私が首を傾げると、殿方は自分の足元を指差しました。何でしょう?
私の足元と同じく色とりどりの落ち葉が敷かれているだけに見えます。

「私も此処で死んだのだよ」

ざあ、と風が吹きました。落ち葉が舞い上がります。
殿方は少し浮いておりました。地面に落ちる影もございません。
よく見ると、丸みを帯びた何かが落ち葉と土に埋まっているのでございます。
それは多分この方の髑髏。ずっと誰にも見つけられなかったのでしょう。白い骨になっても尚、そのままに。

「……独りは寂しいですか?」
「寂しいね。此処には動物も来ないのだよ」

殿方は自嘲気味に語ります。私は宙を蹴って、殿方に抱きつきます。殿方は大凡幽霊とは思えない奇声を発しました。

「これからは私が傍におります」

殿方は何も言いませんでしたが、私をぎゅっと抱きしめてくださいました。



アンコール・リバイバル
(二人ならば寂しくない)


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着物がすきです。


joie様提出
「真正面から受け止めて」


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