しょーとすとーりー | ナノ



振りカエル


駄目。
振り返っちゃ、駄目。
駄目だよ。



>>振りカエル


誰かに。
振り向いちゃ駄目って言われた。
浅はかな僕はうっかり振り向いちゃったんだ。

「…?」

気が付いたら僕は
むせかえるような花の香りに包まれながら
お花畑に居た。

「あれ?」

さっきまで十三参りしてなかったっけ?
おかしいな。

「まぁ良っか」

ぽて。
僕はお花畑に倒れこんでみた。
風が気持ち良いや。

そのうちウトウトしてきて、僕は意識を手放した。


+++++++


「おーい、死んでますか?」
「ん〜…生きてます」

眠い目を擦りながら答える。
目の前には女の子。
白いワンピの女の子。

…初対面で『死んでますか?』って言われたのは初めてだよ。

「君は誰?」
「僕は風斗だよ」
「私は風夏っていうの」

別に、興味無いよ。

なんて言えず。

「風斗も迷いこんで来たのね」
「え?」

風夏はニッコリ笑った。

「此処はね、振り向いちゃ駄目なのに振り向いちゃった人が来るところなの」
「へぇ」
「君も振り向いちゃったんだね」

こくりと頷く。

「折角警告してあげたのに振り向いちゃったんだよね」
「…あの声は君だったんだね」
「そうだよ。誰かが此方に来ようとしてるから、止めたの」

風夏はぷちぷちお花を抜く。
僕は空を仰いだ。

「…ごめんね、言うこと聞かなくて」
「風斗が謝ると雨が降りそう」
「何で?」
「風斗は自己チューって感じだから」
「酷いなぁ」

二人で笑った。
笑い声は空に消えていった。

「帰れるのかなぁ、僕達」
「わかんない。帰れるかも知れないしもしかしたらもう帰れないのかも」

でも、ね。
と、彼女は続ける。

「今が楽しければ良いじゃん」
「そうだね」


今はまだ
帰れないけれども、
君が居る。










Endress...



+++++

五代目拍手御礼文

2006.3.8〜4.16



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