しょーとすとーりー | ナノ



霧散する


わたしは彼と二度会ったことがある。
どちらも街のシンボルである時計塔の上でのことだ。
わたしは苛々すると高いところにのぼる癖があり、丁度良い高さの時計塔はわたしの憩いの場所みたいなものだった。
いつものように人目を盗んで錆びて使い物にならない鍵を外し、柵がないので危険だからと立ち入り禁止になっている時計塔の一番上にのぼる。
すると彼は一番危険で一番眺めの良い場所(わたしの指定席だ)に座り、ただただ暮れる夕日をみていた。

「ねえ、そこはわたしのせきなのだけれど」
「そんなこと、ぼくのしったことではないよ」


生意気にもそう切替えしてくる彼にわたしは憤慨して(もともと苛々していたから尚更だ)彼の背中を強く押す。
すると彼は真っ直ぐ下に向かって自由落下。

「……ああ、またしんでしまうよ」

悲しそうに呟いて、地面にぶつかる直前に霧になって消え失せる。
彼と出会った二度ともそうなって、わたしは二度とも後を追った。
(そういえば一度目のわたしは霧になれなかったような気がする)


霧散する
(三十七度目に気付いたのだけれど、どうやらわたしたちは同じことを繰り返しているらしい)




2007.12.31


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