さよなら行進曲
「そんなの、莫迦がすることだ」
「そうかもしれません」
でも、と。
小さな少年は呟いた。
「僕は怖くない。怖くなんかないです」
「ほんとうに?」
少年はゆっくり頷く。
それを見て、真っ黒な青年は悲しそうに笑った。
「…わかった。連れて逝く」
「お願いします死神さん」
「俺、一応天使なんだけど…まぁいいか」
青年は少年の手をそっと握った。
少年は首を傾げる。
「…くび、刈らないんですか?」
「莫迦言え。首を刈るのは死神。天使の俺は連れて逝くのが仕事だよ」
命を奪うのではなく、尽きた命を連れて逝く。
そう付け足すが、少年は依然首を傾げている。
子供には難しかったか…
青年は自嘲気味に笑う。
「…逝こうか」
「はい」
少年は青年の手を握り返した。
(オールヴォワール。このせかいはぼくがいきるにはきれいすぎたんだ)
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生きることを放棄した少年と天使のはなし。
2007.04.24
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