時雨様ネタ提供
『臨也が欲情した静雄に襲われて、それを新羅とセルティが影から見てたら』










甘いにおいが部屋いっぱいに広がっている。オーブンから出したばかりのクッキーは誰の目から見ても美味しそうだった。
しかしイチゴジャムがどろりとかけられていると、少し血液のように見えないこともない。作った本人である臨也はそれをひとつ摘まむと口に放り投げた。

「……うん、さすが俺。成功したじゃんヤンデレクッキー」

両手を頬に当て恍惚としたヤンデレのポーズを取りながら臨也は頷く。臨也が普通のクッキーを作るはずもなく、血液に見えるのが正解だったというわけだ。
時刻は3時とちょうどおやつ時なのだが、臨也は更に盛り付けるとナプキンをかけて放置した。今日は新羅とセルティが臨也の家に来て萌語りする予定なのだ。そのために臨也はせっかくなのでお菓子作りに励んだのであった。

セルティは首がないため食べることができないが、代わりにクッキーを新羅に「お前をたぶらかしたあいつの血肉の混ざったクッキーだ!愚かなやつだったが私は優しいからな、せめてもの情にお前と一つにしてやる!」と無理矢理食べさせようするプレイができる。セルティへの配慮も臨也は抜群だった。

紅茶の準備をしているとインターホンが鳴らされる。約束の時間には20分ほど早かった。せっかちだな、と思いながらも来てくれた友人を臨也は快く歓迎しに向かう。

「よく来たね新羅、セルティ!新しいBLアニメのDVDを見るたびにテレビを新調したんだ……よ…………」
「よぉ」

ドアを開ければ新羅もセルティもいなかった。いたのは静雄だ。臨也は笑みを顔に張り付けたまま、ドアを勢いよく閉めたのだが静雄の爪先が隙間に食い込んだ。

「いぃぃぃやぁぁぁぁだぁああああ!やめろ帰れ俺は君に用はない!帰れ!帰れ!」
「帰らねえよ!こないだテレビ買いに行くっつって俺の誘いを断ったくせに何だその使用目的は!俺とBLどっちが大事なんだ!」
「そんなの愚問だね!俺が愛しているのは……」
「あああああ聞きたくねえええええ!」

静雄は咆哮をあげながら強引に中に入り込む。なんてタイミングの悪いときに来たんだと臨也は露骨に舌打ちをした。

「まったく何なんだよシズちゃん。アポ無しでうちに来るなって何度言えば……」
「なあ臨也くん。なんで手前はフリルのエプロンなんて着てやがるんですか」
「げっ」
臨也の今の格好は静雄の言う通りだった。淡いピンクがかったフリルがふんだんにあしらわれたエプロンである。臨也はお菓子作りにはエプロンが必要不可欠だと思っていた。そしてヤンデレはシンプルなものより乙女らしいデザインのエプロンの方が猟期性が増しそうだ、と臨也は考えたのだ。結果最も猟期的な男の興奮を煽ったのだが。

「エプロンってことはやっぱ誘ってるんだよな……、ここで何もしなかったらやっぱ男が廃るだろ……」
「シズちゃん、言っとくけど俺は君を誘ってる気なんて何もないから。このエプロンを君の鮮血で染めたいとまで思ってるからね?」

臨也は愛用のナイフを静雄に向けたが静雄は動じることなく歩みよる。当然だ、どうせ5mmも刺さりやしないのだから。

「……テレビ壊されるのと、俺に抱かれるの、どっちがいい?」
「卑怯だっ!そりゃテレビくらいまた買えるけどそしたら今日は見れないじゃないか!」
「じゃあ俺に抱かれるしかないよなぁ……?」
「断る!」

ぎゃあぎゃあと痴話喧嘩をする二人。その二人を見ている存在がいるなど、本人たちは全く気づいてないのであった。

「はぁ……まったくリアルBLもすばらしいよねセルティ……!」
『鼻血を拭け新羅』
「あっ、ありがとう」

セルティの胸元から取り出したティッシュを鼻に詰めながら、新羅は顔のにやけを抑え切れずにいた。セルティも首があったのならこんな状況だったに違いない。
なんで二人がここにいるかというと答えは簡単だ。新羅は臨也の家の合鍵を持っている。ただ使う機会があまりないため臨也は合鍵を渡したことをすっかり忘れているのだが。

「静雄が入っていくのを見たからこんな展開があるんじゃないかと期待してたけど、ほんと期待通りだよ!インターホン鳴らして邪魔しなくてよかった!」
『ああ!見ろ新羅!静雄が臨也のズボンに手をかけたぞ!』
「わぁっ!しかもエプロンは着用したままだね!静雄なかなかわかってるじゃないか!エプロンプレイはやっぱり最後までエプロンを剥ぎ取っちゃダメだよね!」
『その通りだ!なんで私はビデオカメラを持ってこなかったんだろう……!とりあえず携帯で…………』

本来の来客者がそんな平和な会話をしているなか、予想外の来客者と家主はというと。

「やだー!新羅もセルティもくるんだってば!」
「来たら見せつけてやればいいだろうが!」

すでにいるとは知らず暴れていた。





 
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