狭いベッドの上、一糸纏わぬ姿となった二人。静雄は覆い被さりながら白い肌に色濃く残る痣や傷をそろりと撫でた。


「痛…っ」
「…昔は、俺が手前にこんな傷ばっかつけて、新羅が呆れながら手前に手当てしてたよな」
「よく、覚えてるね……」
「忘れたくても忘れらんねえんだよ」


静雄は過去を思い返す。高校生の頃、静雄は臨也の顔面を殴ったことがあった。いつもの喧嘩というか乱闘というか、その延長線上のようなものだった。
臨也の顔半分は痛々しく腫れ上がり、傷をつけた静雄本人ですら目をそらしたくなるほどだ。

そのときだ、新羅がメスを静雄の腕に突き刺したのは。臨也のナイフでは5mm刺さるか刺さらないかだったが、新羅のそれはさらに深く刺さった。メスがいいのか、男だから臨也よりも力が強かったのか……それか、突き破りたいと思うほどに全力だったのか。恐らく最後だろう。
新羅は確かに怒っていた。メスを突き刺したまま発した新羅の凍えるような声を静雄はまだ覚えている。

『臨也を必要以上に傷付けないでくれるかい?それは僕だけで十分だ』

そのときから新羅は歪み始めていたのかもしれないが、それを知るすべはない。


「……なのに、今は逆なんだな。俺だってたぶんこんなに傷付けたことねえだろ」
「ぅぁ……っ」


上半身から順に痣に唇を押し当て、時折舐める。痛くて、くすぐったくて、気持ちよくて、臨也は小さく喘いだ。


「シズちゃん……それやめて……」
「ぐちょぐちょにされたいって言ってただろ?よくわかんねえから、俺のやり方でやりたい」


ぐに、と胸の辺りの傷に静雄が舌を押し当てるも柔らかな弾力に押し返す。それが楽しくなってきた静雄は何度も繰り返した末、舌をずらし先端の突起を加え込んだ。


「ひ、ァ、シズちゃん!?」
「やわらけぇ……」


ちゅうちゅう赤子のように吸われ臨也は顔を真っ赤にしながら、行為に溺れすぎないように他のことを考えようとした。そうすると思い浮かぶのは新羅との行為で。
新羅はただ乳首を吸うだけじゃなくって、ローターをテープで固定して何時間も放置したり、微弱な電流を流したりもした。痛くてマニアックで、性的暴行のようなセックスばかりだったがそれでも臨也は新羅が好きだった。

濡れそぼった秘所に静雄の指が触れる。割れ目の肉をかきわけ、慎重に指を一本差し込むと容易く奥まで入っていった。


「……こんなに簡単に入るもんなのか?」
「…外出るちょっと前まで弄られてたから、ほぐれてるんだよ。馴らさなくてももうそのまま入れれるから……」
「そうか」


静雄の逞しい怒張が臨也に触れる。ぐちゅ、と粘膜が合わさりこれからくる刺激に臨也は目をとじ覚悟したが、静雄は逆に離れていった。


「………どうしたの?」
「…ゴムつけなきゃやばいだろ。あー…手前持ってるか?」
「持ってるわけないじゃん」


相手がいなかった静雄も、着の身着のままで出てきた臨也もコンドームを持っているわけがなかった。


「外で出してくれるんなら生でもいいよ、だから、はやく…」
「後悔しねえな…?」
「…それはわかんない」
「ひでェの」


再び触れた粘膜は今度は一気に突き立てられた。臨也は高い嬌声をあげ、静雄の腕に爪を立てる。


「あ、ッア―――!ぁ、ぅ、ふ…っうぅ」
「いざ、や…」
「う、ひ、っく、ァ、ひっく、ッ」


臨也は静雄から顔を反らし嗚咽をこぼした。シーツがどんどん濡れていく。

忘れられると思った。しかし余計辛くなるだけだった。
セックスすれば楽になれる、忘れられるなんてそんなことはない。ただ逃げているだけだ。普段の臨也ならそんな逃げに走ることもなかった。それほどまでに弱っていた。

けれど臨也が泣いた理由はそれではなかった。少しは含まれていたが、それよりももっと大きな割合を占めるものがあった。


「ごめん…やっぱりできない……!新羅じゃなきゃ…酷いことばっかされても、新羅じゃなきゃだめなの……ごめん、ごめん……っわぁあああぁあああ!!」
「臨也…」


未だ解放されていない欲望を中から抜き、泣き崩れる臨也を抱きしめることしか今の静雄にはできなかった。















新羅は携帯とにらめっこしていた。正確にいえば、ダラーズの掲示板とにらめっこだ。何件かは書き込まれ池袋にはいる、もしくはいたということが確定したが、特定するには至らない。

セルティからの連絡もこない。新羅は内心焦りながら、何度目ともつかない更新ボタンを押した。
新たな書き込みが上がる。その内容を見た新羅はすぐに駆け出した。

『折原臨也が金髪バーテン服の男と歩いているのを見た』

それだけで新羅が目的地を悟るのは容易いことだった。





 
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