「はぁ…シズちゃん、君の後輩に一体何があったの。俺の妹に感化されてああなったんなら謝るよ…」
「ちっ…アイツもライバルだったのか…」
「話聞いてる?」


静雄はしばらく走ってから臨也を路地裏に連れ込み、そこで臨也はブラジャーをつけ直した。その間は一応背を向けている。


「……やっぱその胸が悪いんだよな」
「え……って、シズちゃぁぁん!?」


静雄はいきなり服を脱ぎ出した。その突拍子もない行動に臨也は全力で身をはなした。
バーテン服のベストが、そして下のシャツが取り払われ上半身裸となった静雄の体は臨也を少しときめかせた。ほどよくついたしなやかな筋肉、細すぎない男の体。だがこんなところでそれを晒していてはただの露出狂だ。


「シズちゃん、露出狂はよくない。実によくないよ!」
「露出狂じゃねぇ。いいからこれ着ろ」
「なぜ!?」
「胸だいぶ隠せるんじゃねぇか?」


たしかに静雄の言うとおり胸は隠せるだろう。サイズは有り余るほどであるし。しかし臨也は受け取りを拒否した。


「いい、遠慮するよ。犯罪者と一緒に歩きたくない」
「俺は手前のコート着るから大丈夫だ」
「俺のコートがシズちゃんに着れると思う!?」


ぎゃあぎゃあと路地裏で半裸の男と巨乳美女が騒いでいるというのは奇怪な光景だった。
そこでそれに終止符を打つ人物が現れてくれた。


「……静雄、まさかと思ったがお前が臨也を襲うだなんて…!」
「ドタチン!」


やってきたのはわなわなと震えた門田だった。臨也は門田の姿をとらえるなりその胸に飛び込んでいく。静雄は急いで服を着直したが、顔は若干青ざめていた。


「門田、誤解するんじゃねぇぞ。俺は臨也の胸を隠そうとして…」
「本当か?臨也」
「一応本当と言ったら本当だね」


ぎゅぅぅと臨也に抱きつかれて触れた柔らかく大きな感触に門田はようやく異変に気づいた。耳まで真っ赤になり、臨也の腕を引いて路地裏から出ていく。


「臨也、着替えよう。服なら狩沢がたぶん持ってる」
「うん、着替える」
「なんで門田のときはそう素直なんだ!?」


路地裏をぬけたすぐそこにワゴンは停めてあった。後部座席のドアを開けると何かを熱く語っていたらしい狩沢と遊馬崎が視線を向ける。と、臨也の姿を見た狩沢はすぐに抱き寄せてワゴンに連れ込んだ。


「きゃー!?イザイザが巨乳美女になってる!?」
「おおっ!?まさか愛の力で!?」
「巨乳展開萌ェェェ!!」
「いやぁぁぁまたセクハラ女ぁぁぁ!!」


一切の遠慮もなしに狩沢が臨也の胸を揉みしだく。誰かに会うたびにセクハラされているのはもはや気のせいではない。
門田はポコンと軽く狩沢の頭を叩いて本題に入った。


「臨也に胸が隠れる格好をさせてほしいんだが服はあるか?」
「あるわよー。あえて巨乳を隠しつつも服の下ではっきりと存在を主張!最高の萌よね!任せて!!」


狩沢はそう言うなり車内にいた遊馬崎と渡草を追い出した。男性陣は外で待機である。


「………悪ィな、なんかいろいろ」
「いや、あんな臨也を放っておくわけには行かないからな」


女性二人が残されているだけのはずのワゴンは時折ガタガタと揺れていた。「いやだよそんなの着たくない!」「お前それ絶対ふざけてるだろ!?」「あっ、そんなとこ触っちゃらめぇええええ!!」などの臨也の絶叫付きで。静雄の血管が浮き出るのを他3名は必死におさえるのだ。

そして20分後。ようやくドアは開かれた。


「うふふー、我ながら満足の出来よ!」
「わぁぁぁんシズちゃんドタチンー!」
「え、臨也!?」


たしかに臨也の胸は要望通り隠されていた。隠されていたのだが服装が問題だった。
臨也の服装は静雄のバーテン服のズボンをタイトスカートにし網タイツをはかせたものとなっていた。


「いや…これは…」
「シズちゃんとお揃い目指してみたよ!」
「狩沢、ありがとな」
「礼言うなよシズちゃん!!」


静雄の脇腹をぐりぐりとナイフでおしながら臨也が言う。当然だが刺さらない。

胸が隠されたのはいいが、臨也は押さえ込まれてパツンパツンになったバーテン服というさらに欲情を煽る格好になっていた。

臨也はもう限界だった。


「もう…いい……シズちゃん、俺ひとりで帰る…」
「は?」
「今日はもう誰とも会わない!さよなら!」
「おい…臨也ー!?」


臨也は静雄を突き飛ばして逃げた。突き飛ばしされた先は車道。静雄は門田たちが見ている前で不運にもそこを通りすぎようとした軽トラックにはねられた。

静雄なら何も問題はないだろう。実際にその通りはねられても静雄は平気だったのだが、それが大きなタイムロスとなった。





 
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