突然の訪問に焦る新羅とセルティをよそに静雄はズカズカと上がり込んでくる。ソファの後ろまで来てガッと新羅の肩を掴むと少しずつ力を加え始めた。


「おい、臨也どこにいるか知らねぇか。探してんだけど見当たらねぇんだ」
「痛い痛い痛い!な、なんで臨也探してるのかな?とりあえず離そう落ち着こう!」
「チッ」


静雄は舌打ちをひとつして新羅を解放するとソファの空いているスペースに腰をおろした。
煙草を出しかけたが、室内に灰皿がないため諦めたようにしまう。


「今日アイツの誕生日だろ?誕生日くらい彼女に優しくしてやったらどうだってトムさんに言われたから…」
「臨也に優しくしたいなら今日1日会わないであげることが一番の優しさだよ」
「んだと手前ッ!!」
『お、落ち着け静雄!』


今にも新羅を殴りそうな勢いの静雄をセルティは自らの影でソファに縫い止めた。すぐに正気に戻った静雄は握っていた拳を開きヒラヒラと動かすことで戦闘意欲がないことを知らせる。


「悪ィ…」
『いや、新羅の言い方も悪かったからな。臨也は何というかその、今日だけは静雄に会えないみたいなんだ』
「…せっかく、今日は優しくできると思ったのにな」
しょぼんと項垂れてしまった静雄にセルティの心が締め付けられた。静雄を縫い止めていた影を解き、セルティは高速でPDAに文字を打ち込み新羅に見せる。


『やっぱり臨也と会ったっていいんじゃないか?静雄だって理性があるんだし、臨也が巨乳になってたっていきなり襲いはしないだろう。これじゃ静雄が可哀想だ!』


たしかに…という意味合いで新羅が頷くのと同じく扉が開かれた。ひょこりと現れた臨也は片胸を手で押し上げながらやってくる。


「重い…俺巨乳じゃなくてよかった……って、え?」
「いざ…や…?」


臨也と静雄は対面を果たした。
静雄はゆっくり立ち上がり臨也に近づいていく。臨也は後すざり部屋から脱出しようとしたがその前に扉が閉められた。背中が扉にぶつかり、顔の横に静雄の腕が置かれる。


「臨也…これ……」
「シズちゃん、こんなとこで発情しないでよ?ね?」
「これ……手前、太ったか?」
『「「は?」」』


その発言に驚いたのは言われた本人だけではなく聞いていた二人もだった。
脱力した臨也はハァー…と深くため息をつく。


「あのさ…たった1日で胸にだけ器用に脂肪がつく太り方があるんなら世の中みんな巨乳になってるよ」
「そっか…それにしてもすげぇな」
「うぇ!?」


ずぼっ、と。
静雄は開いた胸元からのぞく谷間に躊躇なく腕を突っ込んだ。手首から肘の半分あたりまで容易く埋まり、その中で静雄は拳をグーにしたりパーにしたりと遊んでみる。


「あったけぇな。顔埋めていいか?」
「い…っやぁあああああああ!新羅っセルティイイイ!!」
「静雄!?君臨也に優しくするんじゃなかったのかい!?」
『さすがにそれは大問題だと思うぞ!?』


臨也は静雄の手から逃れると涙目でセルティの後ろに引っ込んだ。当然といえば当然である。
だが静雄は自分が悪いことをしたとは全く思っていない。ものすごくタチの悪い性格なのである。


「こいよ臨也。優しくするから」
「セクハラ男の優しくするはどんな意味だ!?性的な意味で!?」
「そういう優しさがほしいならいつだってくれてやる」
「助けて犯されるぅぅぅ!」


臨也が叫ぶと同時にセルティの影が動いた。均等な感覚を開けながら影が天井から床までを結ぶ。それはまるで臨也たちと静雄を分かつ檻のようだった。


「セルティ、こりゃどういうつもりだ?」
『静雄、臨也はこんな状態になってしまって精神がすごく不安定なんだ。セクハラはしないと約束しない限り臨也は渡せない』


セルティは本気だった。セルティだって臨也を可愛がっているのだ。それに同性としてセクハラは見逃せない。
静雄はセルティの後ろの臨也をちらりと見た。戸惑っているような怯えているような表情。そんな臨也に無理を強いる静雄ではなかった。


「………わかった。しねぇよ」
「シズちゃん、ほんと?」
「本当だ」


臨也がセルティの後ろから抜け、静雄の眼前に移動する。胸元は相変わらず欲情をそそるものだったが静雄は何とか耐えきった。


「じゃあ君たち今日はもう家に帰って大人しくしてたら?二人だけで誕生日を過ごしなよ」
『静雄、家までちゃんと臨也を守るんだぞ』
「わかってる。邪魔したな」
「ばいばい新羅、セルティ!」


静雄に腕を引かれ臨也は新羅宅をあとにする。

まぁ、このまま何事もなく家に帰れないというのがお約束であった。





 
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