デリック、津軽とデートらしきものをした俺だけど、今回の月島くんとのデートが一番アレだった。デートとは言わないのかもしれない。強いて言うなら……そう、顔合わせ。
どこで知ったかなんて知らないが、月島くんは俺の至上最悪な妹たちに会いたいと言い出した。


「……月島くん、はっきり言おう。やめておいた方がいい。あんな痴女代表みたいな女に会ったら純情な月島くんなんてすぐとって食われるよ」
「それでもやっぱり折原さんの肉親ならご挨拶しておきたいですし……」
「しなくていいってば!妹たちにバレたらややこしいことになるし」


あの妹たちがこんなシズちゃんと同じ顔の男が複数いるだなんて知ったら。その後の展開は目に見えている。
しかしシュンと落ち込む月島くんに心が締め付けられる。どうするかと悩んでいると、ソファでポテトチップスを食べていたデリックが言った。


「それなら俺も臨也ちゃんの妹に会いたかったなー。月島だけズリィの」
「……やっぱり抜け駆けはダメですよね」
「そうそう。みんな平等、抜け駆け無し。ポテチ食う?」
「いただきます」


月島くんは差し出されたポテトチップスの袋から数枚抜き出して食べる。なんだか微笑ましい。意外と仲いいよねこの人たち。


「じゃあどうしようか。月島くんとだけ出かけないっていうのはそれも不公平だよねぇ」
「俺は別に出かけなくてもいいですよ。折原さんと二人きりでいられたら」
「そう?」


やっぱりいい子だな、この子。
それを聞いていたデリック、そして実はデリックの横で本を読んでいた津軽が立ち上がった。


「それなら俺たちは上にいるから」
「変なことすんなよ月島」
「え?」
「言ったろ?みんな平等、お前も臨也ちゃんと二人きりになる権利有り」


揃って階段を上っていったデリックと津軽に唖然とする。予想外の気づかい。シズちゃんが原型とはとても思えない協調性だ。

リビングに残された俺と月島。しかし何をするかが問題だ。ただ家にいるだけなら普段と何も変わらない。しかし何かをやると言っても特にない。


「……月島くん、何かしたいことでもある?」
「したいこと……何でもいいですか?」
「俺にできることならいいけど……」
「ならちょっと待っててください」


そう言うと月島くんはさっき津軽とデリックが向かっていった部屋に行った。ドアが少し開いていたのか笑い声が聞こえる。
「うっそ俺も見たい!」だとか「デジカメを渡しておくから頼む」だとか、そんな感じのことが聞こえた。……何でだろう、とても嫌な予感がする。
しかし折原臨也永遠の21歳、逃げるだけの時間はなかった。ほどなくして月島くんは下りてきた。段ボール箱と一緒に。


「……あえて聞こう。その段ボール箱は一体何かな?」
「折原さんの不在中に届いたものです。矢霧さんが中身を確認したところ爆発物など危険物の類いは発見されませんでしたが、中身が中身ということで折原さんに見せるわけにもいかず俺たちが一時的に保管していました」


べりべり。ガムテープを剥がす。胸騒ぎがおさまらない。開けたくない。でも、ああ。
覚悟を決めて開いた。段ボールの中身は……メイド服、アンド、猫耳カチューシャ。


「……差出人は狩沢かい?」
「たしか違ったかと。宛名は……赤林と記名されています」


赤林さん一体何してるんだ!そういえばいつだったか「お嬢ちゃんみたいな可愛い子にご奉仕されたいねぇ」と言っていたような気がする。まさかそれで送ってきたんだろうか。いや、送る理由なんてそれしかない。
今度会ったときは全力で股間を蹴りあげてやろうと俺は密かに決意した。


「それで何かな、月島くんは俺にこれを着てほしいと?」
「デリックさんや津軽さんと話してたんです。折原さんなら似合うだろうって。ダメですか?」
「うーん……」


たたまれていたメイド服を広げる。胸元開きすぎ、スカート短すぎ、絶対アダルトショップ商品だなこれ。背中なんと紐しかない。


「いくら何でもこれを着るのは恥ずかしいかなぁ……」
「やっぱりそうですよね……」
「でも」


猫耳カチューシャを取り、頭に装着する。そのまま月島くんの腕に抱きつき、めいっぱいの猫なで声で言った。


「このくらいならしてあげられるかニャン?」
「………………!」


あれ、月島くんが固まった。そんなに気持ち悪かったかな。


「つ……月島くん?」
「折原さん……っ!」
「えっ!?」


パシャ!といきなりデジカメを向けられ写真を撮られた。月島くんは真っ赤な顔をして謝りながら二階へかけ上っていった。


「……どういうことだよ、一体」


俺も続いて二階へ行き、三人がいる部屋を開けようと……したところでやめた。聞こえてくる会話が思春期すぎる。

何もなかったことにしよう。というかこれ、デートじゃないよね。





 
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