「だぁってさぁ、よく考えてみ?臨也ちゃんっていう超絶美女が俺の隣で無防備に寝てるんスよ?健全な青少年ならこれにムラッとしないはずがないじゃないスか。だから俺はつい夜中に目が覚めてつい部屋の鍵をかけちまってつい臨也ちゃんの胸にダイブしたわけっスよ。おーけー?」
「OKなわけがない」
「ふぎゅうッ!?」


両手足を縛り付けられたデリックの頭が津軽に踏んづけられる。朝っぱらから何プレイしてんだとは思わないでほしい。ただいま絶賛制裁中なのだ。

俺はシズちゃんの足の間に座って食後のコーヒーを飲んでいる。デリックには罰として朝食抜きで俺たちは見せつけるようにして食べてやった。なんで俺がシズちゃんの足の間にいるのかはシズちゃんが勝手にそうしたからとしか言いようがない。


「もういいよ津軽。デリックはもうこういうことは禁止だからね?」
「ノーブラで寝てる臨也ちゃんを前にして禁止だなんてそんなご無体な!!」
「ノーブラだと!?」


なんでノーブラにそんなに反応するんだよシズちゃん。
デリックは津軽から解放されると自ら拘束をとき、ふふんと鼻を鳴らした。


「まさか俺も臨也ちゃんがノーブラだとは思わなかった。臨也ちゃんってけっこう胸あるし、それでいてノーブラでも形崩れないって正に男の夢…!」
「津軽」
「わかった」
「あぁああぁああああスンマセンスンマセンスンマセェエエエエン!!」


津軽はデリックの上に馬乗りになるとがっちりと首をホールドした。すぐにデリックはバンバンと床を叩いて降参をアピールする。全部これをシズちゃんの顔でやってるんだから面白いったらありゃしない。

……ああ、シズちゃんといえば。


「ねぇシズちゃん、今日仕事じゃないの?」
「あ」


時計はもう9時を過ぎたところだ。完全に仕事忘れてたなこいつ。シズちゃんは慌てて俺をどかすと一目散に玄関にかけていった。「津軽、デリック……特にデリック!臨也に手ェ出すんじゃねぇぞぉおおお!!」と言い残して。


「……ずいぶんと慌ただしいねぇ」
「静雄さん、大丈夫なんだろうか」
「津軽…いいからもう離してくれないスか…」


デリックは顔を青ざめさせていた。それはそうださすがに死にかける。
津軽はようやくデリックから離れたけれど、まだデリックの行動には目を光らせていた。うん、いいね津軽は。

デリックは起き上がり体をぐっと伸ばすと俺の隣に座る。続くように津軽がもう片側に座った。やはりこれが彼らの定位置らしい。


「そういえば、臨也さんは仕事はいいのか?」
「臨也ちゃんどんな仕事してんの?フリーター?ニート?」
「俺のこと一体なんだと思ってるんだよ」


津軽とデリックは当然だけど俺がどんな仕事をしているかは知らない。別に言って困るような仕事ではないし、変な仕事をしてるとかしてないとか勘違いされるよりは言った方がずっといい。


「俺は情報屋っていって家でもできる仕事をしてるんだよ。だから出勤はしない。たまに外に出るときもあるけど、そのときは二人は留守番しててね」
「えー、俺も外に出たいっス」
「気持ちはわかるけど我慢してよ」


たしかに家にずっといさせるのは悪いと思う。でもシズちゃんはいっぱい恨みを買ってるんだ、けっこう俺のせいだけど。だから顔が全く同じ津軽とデリックが狙われてもおかしくない。返り討ちにしてしまいそうな気もするけど。

それにもっと問題なのは「平和島静雄は三つ子」「平和島静雄は分身の術を使える」「デリヘルをしてる」「着流し姿がエロい」と思われることだ。これはこれで面白いけど後がめんどくさい。二人には家にいてもらうのが一番いいんだ。


「ごめんね窮屈でしょ?この暮らしが嫌だったらいつでもシズちゃんのことを誰も知らないところに住居をあげるから…」
「いや、俺は臨也さんがいればそれでいい」
「俺も俺も!家から出ないことくらいどーってことないし!」
「…ん。ありがと」


素直に好いてくれる二人は嫌いじゃない。元がシズちゃんとはとても思えないほどだ。

さて、そろそろ仕事しないと。波江さんも来ることだし。
…………………あ。


「隠れて!」
「え」
「寝室でもどこでもいいから引きこもってて!絶対におりてこないでね!お願い!」
「わ、わかったっス」


津軽とデリックは疑問が多数残るだろうに余計な詮索をいれずに部屋に向かってくれた。

この二人の存在が波江にバレたら…と思うとゾッとする。波江にバレたら何ちゃかされるかわからないし、妹たちに連絡されたらそれこそ…ああ考えたくもない。
二人には本当に形見の狭い思いをさせている。いっそみんな開き直るくらいになったらもうちょっと楽させてあげたいんだけど。

そんなことを考えてる俺自身がおかしかった。俺がこんなに優しいだなんて俺じゃないみたいだ。少しずつだけど、たった1日で俺は変わってきている。

さて、波江さんの出勤時間はもうすぐだ。





 
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