xxx様ネタ提供作品
『新羅と腐男子トークでお泊まりやお出掛けをしていたら静雄放置でお仕置きされる臨也』










「やっぱりさ、最近のブームはオヤジ受けだと思うんだ!」
「わかるわかる!オヤジでも可愛いところがたくさんあるんだよねどうしよう憤死しそう」


ビール片手にする話としてはどうよ、みたいな話かもしれないけど俺と新羅にとってこれは一番の酒の肴だった。
今日は週末、俺は新羅の家に泊まりにきていた。


「残念だよね、セルティが今夜仕事だなんて……」
「俺からの依頼はなるべく週末と被らないようにしてたんだけどね。誰だよ全く……」


クッションを抱えて横になる。このクッションは先日新羅がアニくじをやってきた戦利品らしい。他にもキーホルダーやら何やらがゴソッと紙袋に入っていた。一体何万円つかったのかなんて野暮なことは聞かないでおく。


「ねえ新羅、明日乙女ロードいこうよ。オヤジ受け買い漁りたい」
「もちろんだよ!……と言いたいところだけどいいのかい?」
「え?」
「最後に静雄とデートしたのいつ?」
「……あ」


言われてみればそうだ。ただ会ってるだけなら池袋でしょっちゅうだけど、デートとなるともう半月以上していない。それなのに新羅とは毎週のように会ってるだなんて知れたら一体何を言われるか。


「……さすがにそろそろヤバいかなぁ」
「ヤバいと思うよ」
「でもオヤジ受けが俺を呼んでる……」


脳内でシズちゃんとオヤジ受けを天秤にかける。ああシズちゃん。ああオヤジ受け。
ぐらぐら不安定に揺れながらついにガタンと傾いた。勝者はオヤジ受けだった。


「シズちゃんとは明後日デート!だから明日はオヤジ受け!!」
「臨也のその潔い決断力が男前すぎて惚れそうだよ!」
「惚れろよー」
「惚れるー」


ぎゅう、と正面から抱き合う。俺より若干身長が高いけど俺よりもひょろっこい新羅は抱きつきやすかった。
20代も半ばの男が女子高生のノリで抱き合う。どうしようやってるのは自分なのになんて萌えるシチュエーション。ハァハァしそうだ。


「新羅……頼むから今『兄さんが僕を殺したんだ!』って言って……あれ超萌えた」
「僕の声真似もなかなかのものだろう?」
「うん、だから早く……」


抱きしめる腕に力を込める。新羅は俺の耳元に唇を寄せた。
くる……!
目を閉じて甘い声に耐えようとすると、耳に届いたのは豪快な破壊音だった。


「……ねえ、俺すっごく目を開けたくないんだけど」
「開けた方がいいと思うよ。リアル般若を見たくはないのかい?」
「遠慮します……」


抱き合ってるせいで新羅の体が小刻みに震えているのがよくわかった。そうだよね、怯えるよね。誰なのか十分に予想がつくから目を開けたくない。
と、思っていたら後ろから腰を抱かれ新羅から引き剥がされた。驚いて目を開けると、視界いっぱいに新羅の言う通り般若が飛び込んだ。


「……やあ、シズちゃん」
「最近会わねえと思ったら浮気してるだなんていい度胸してるなぁ臨也くん」


般若の笑顔の怖いこと怖いこと。


「浮気じゃないよ。新羅は友達。知ってるだろ?」
「友達が抱き合うかよ!」
「抱き合うよナメんなよ!」
「ああもう埒があかねえ!!」
「ぅわっ」


ひょい、と担ぎ上げられシズちゃんは廊下を歩き出した。おい新羅茫然としてないで助けろよ馬鹿!
連れていかれたのは新羅の寝室だった。ベッドに投げられ、痛みに呻いているとしっかりと施錠された。
なにこれ、ヤバい。


「シ……シズちゃん、ここ新羅の家だよ?わかってる?」
「ああ、わかってる」
「ちょっ!わかってないだろ!?」


シズちゃんは俺に覆い被さると首筋に顔を埋めた。べろりと舐めあげられるとぞくぞくする。何度かそれを繰り返したあと、シズちゃんは何を思ったのか思いっきり噛みついてきた。


「いっ、いだあああああああ!!痛い痛い痛いいいいい!!」


食い破られる。冗談抜きでそう思った。
しばらくしてようやく離れたシズちゃんの口元には赤が散っていた。おそるおそる見てみればシーツを汚すほどに血が溢れていた。吸血鬼でも絶対ここまでしないぞ。


「シズちゃんひどい……痛い……」
「お仕置きだ」
「こんな猟奇的なお仕置きがあるわけないだろ」


痛い痛い痛い。化膿しそうだよねこれ、新羅に手当てしてもらわないと。
俺が今後の傷のことを考えていると、シズちゃんがさっき噛みついてきた人間とは思えないほど優しい力で俺を抱き締めた。


「会いたかったのに、なんなんだよ……」
「シズちゃん……ごめんねシズちゃん、なかなか会えなくて」


そうか、シズちゃんは俺に会えなくてさびしかったんだ。アニメ三昧でシズちゃんにかまってあげられなかったことを少し悪く思う。


「シズちゃん、明後日デートしよう。美味しい喫茶店があるんだ」
「おう……、なんで明日じゃないんだ?」
「……あははははは」


俺は笑ってごまかすことしかできなかった。





 
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