毎週、週末は中学生の頃から続いてることがあった。新羅に急患、臨也に仕事のない限り、臨也は新羅の家に泊まりにいくのである。
それは朝まで萌語りするという、ふたりにとって至福の時であった。


「やぁ新羅、きたよー」
「いらっしゃい臨也!このときばかりは君が来るのが楽しみだよ!」
『待ってたぞ臨也!』


そして今日がその日である。
セルティにまで臨也が歓迎されている理由は簡単だ。セルティも腐っているからだ。
新羅がセルティと想いが通じてから腐ったため、まだ腐女子歴は浅いのだが大事なのは年月ではない。現に腐トークを待ち遠しくしている。


『そういえば今さらなんだけど大丈夫か?その…静雄が嫉妬したりとか』
「さすがにシズちゃんも友達の家に泊まったくらいで怒らないでしょ」
『いや…、もしかしたら浮気してるとか勘違いしてるかもしれないぞ』
「嫉妬!浮気!!」


突然叫んだ新羅は眼鏡の奥の瞳を爛々と輝かせながら、右手に臨也、左手にセルティを抱き抱えてくるくると回った。


「いいじゃないか浮気だと勘違いして友人にまで嫉妬する独占力の強い静雄!これこそが萌だよリアルBLやっふい!!」
『そうだな!そのあとお仕置きと称して監禁したりが王道だ!逆に「俺以外を見る臨也なんて…!」な感じでヤンデレルート突入か!?』
「シズちゃんならやりかねない!どうしよう自分のことなのに萌えてきた!!」


異常なまでのハイテンションで回り続けるこの光景はとても常人には見せられない。だが彼らにとってはこれが普通なのだから仕方がない。

三人は玄関からリビングへ移動するとひとまず落ち着いたようでそれぞれ行動を始めた。臨也は出かけに買ってきた菓子類を広げ新羅は茶を用意し、セルティはパソコンを起動する。PDAよりも見やすいように切り替えるためと、BGMに笑顔動画を利用するためだ。

それらの全てが終わると、あとはオールナイトで腐トークが待っている。まぁ朝日が登り始めたら即終了で眠りにつくのだが。
ただいまの時刻は約23時。夜はこれからだ。セルティが某ゲームのサントラを流してから宴が始まった。


「今週萌えたことは騎士×皇子かな」
「あー、いいよね下剋上!皇子に絶対忠誠を誓っていたけど皇子への愛が我慢できずに禁を犯してしまった…とか!」
『もしかしたら皇子から誘っているのかもしれないぞ!僕を気持ちよくさせるのが従者の役目だろうとか!』
「攻めでも受けでもそのセリフいいね!さすがだよセルティ!」
「ほら、こんなにも萌が広がる!すばらしいね騎士×皇子!」


箱にはいったままだった高級菓子店のクッキーを開けながら、臨也は騎士×皇子の良さを語り始める。三人はリバも大好きなため皇子×騎士についても熱く語った。


「俺の命令には逆らえないだろ?とか最高だよね!」
「そうそう!あ、なんか新羅に命令されたい」
『わかるぞ!新羅ってちょっと声変えたら命令ぴったりな気がする』
「えー、仕方ないなぁ」


そう言いつつも満更じゃない新羅は立ち上がり眼鏡を外した。片手を開いた状態で左目の上にかざし、普段よりも低い癖のある声で言った。


「命令だ!全力で俺を見逃せ!」
『イエス・ユア・マジェスティイイイ!!』
「全力だ!全力をあげて腐った俺らを見逃すんだ!というか何そのセリフのチョイス!」
「それも全力で見逃すんだ!」
「イエス・ユア・ハイネ――――ス!!」


ただで高かったテンションがさらに跳ね上がりとんでもないことになっている。
そんなことをしているうちにもサントラのひとつめが終わってしまった。


「あれ?早いねもう1時間近く経った?」
「次は何を流すんだい?」
『そうだな…、じゃあ次は歌ってみたのランキングから』


カーソルを動かしてその位置へクリックする。昨日一昨日あたりからランクインしているものもあれば今日初めて目にするものもある。


『どれにしようか……あっ!ツパクロ☆マイスターさんの新曲1位だぞ!』
「本当かい!?やっぱいいよねこの二人!大好きだよ!」


ツパクロ☆マイスターというのはツパチン、クロムというふたりの歌い手からなるユニットである。ツパチンの低音エロボイスとクロムの愛らしい両声類っぷりが人気だ。ふたりの新曲は必ず上位には入る。
ちなみに真ん中の「☆」は「ギャルゲみたいで可愛いから」とツパチンが語っている。


『クロムさんかわいすぎるよな…!臨也もそう思うだろ?』
「いや…」
「いや!?クロムさんがいや!?まさかここで好みが別れるだなんて!」
「いや、そうじゃなくてクロムって俺なんだけど」
『……………………なん…だと……!?』


セルティの影の異様な分泌と新羅が臨也の肩を前後に揺らしまくるのは同時だった。


『ちょ、ほ、本当か?本当に臨也がクロムさん!?』
「た、たしかに声似てるけど……ちょっと歌ってみて!」
「えーと、それじゃ…」


臨也がクロムの歌ってみた曲で一番人気のある歌のワンフレーズをうたう。それはふたりが何百回と聞いた声と全く同じだった。


『ほ、本物だぁあああ!!』
「え、じゃあツパチンさんは…」
「ドタチンだよ」
『マジでかぁああああ!?』
「門田くんもまさかの歌い手!?教えてくれればよかったのに!」
「あははははっ!」


驚愕の新事実に多大な興奮を見せる二人に臨也は声を上げて笑った。これだから人間は面白いのだと。

その後は強い希望により人気歌い手の観客2名の生ライブが開催された。





 
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