!静雄視点










告白してきたのはまだ高校生だったとき、臨也のほうからだった。


「君の声、容姿、性格全てに心奪われたんだ!俺と付き合ってくれないかな?」


このときのことを俺は一生忘れはしないだろう。なぜなら愛情という形で俺の全てを認め受け入れてくれた奴は初めてだったからだ。
それまでだって臨也は俺のことを少しも恐れずに接してきてくれていた。だから俺の好意が臨也に向かっていないわけはなく、俺はその告白に即座に頷いた。

この時は知らなかったんだ。臨也が腐男子と呼ばれる者だったなんて。




















「ねぇねぇシズちゃん!次はこのセリフ読んで!」
「あ?……こんな恥ずかしいセリフ言えるかっ!!」
「えー、じゃあもう少し温いのを……」


パラパラとページを捲られていく本は俗にボーイズラブというらしい。その本の中の臨也がこれといったセリフを読まされる。そんなことはしょっちゅうだった。

臨也が腐男子だと知ったのは告白された翌日のことだ。臨也は紙袋いっぱいにボーイズラブ本を持ってきて「俺、腐男子だから」とカミングアウトしてきた。

腐男子というのがわからなかった俺は、すぐに新羅に相談した。
すると「簡単に言えばBL作品を好む男性のことだよ。ちなみに僕も立派な腐男子だ!!」と親友にまでカミングアウトされて俺はどうすることもできなかった。

臨也と新羅は中学生の頃から腐男子だったらしい。今から数えるともう軽く10年は腐っているようだ。腐男子すげぇ。その一言に限る。


「あ、このセリフなら大丈夫だよ!健全健全!」
「あー…まぁ、手前にしては自重したほうか?」
「うん!ねぇ早く、俺我慢できない…っ」


俺にすりよりながらとあるページの一部分を指差してねだる臨也はヤバかった。俺の理性的な意味で。臨也が腐男子でも関係なく俺は臨也を愛してるんだから当然だろう。
こういうセリフを読むのは未だにちょっと抵抗があるが、これも臨也を喜ばせるためだ。そう思えば簡単なことだった。


「あー…『貴方は誰のモノだかわかっているんですか?私のモノでしょう?他の男に媚びを売るだなんて…、これはお仕置きされたいということだとみなしますが?』」
「――――っ!!」


棒読みではなくしっかりと抑揚をつけて読む。初めの頃、棒読みで読んだら本の角で殴られたあと一切口をきいてもらえなかった。学習した俺はよほど卑猥なセリフじゃないのならそれなりに頑張って読むようにしている。…このセリフも一歩間違えればかなり卑猥になるんだろうが、このくらいはサービスだ。

臨也はどうしたのか…といえば口元を押さえピルピルと震えている。隠せていない耳は真っ赤、目も涙が溜まっている。
ああ、これはクるな…と思った次の瞬間には臨也は熱烈に俺に抱きついてきた。


「ああもう最高だよシズちゃああああん!!やっぱ敬語鬼畜紳士はエロボイスだよね!シズちゃんの声にぴったりだ!うー、俺もシズちゃんにお仕置きさーれーたーいー!言葉責めとか恥辱プレイとかー!」
「言葉責めも恥辱プレイも似たようなもんじゃねぇのか?」
「そうだよ!俺はシズちゃんの声に脳髄まで犯されたいんだ!」


きゃあきゃあ騒ぐ臨也はもはや誰にも止められない。止めようとしたら刺される。普段5ミリしか刺さらないナイフが7ミリまで刺さるくらいに本気だ。


「次はどうしようかなぁ。自分で読むのもたまにはいいかな。どれにしようかな?シズちゃんはどういうのがいい?」
「別になんだって…」
「なんだっていいって言ったら眼球にアイスピック突き立ててやる」
「……考えさせろ」


もし俺も腐男子だったら何か即答していたのかもしれない。だが俺はいたってノーマルだ。

どう答えればいいかわからず悩んでいると、臨也は助け船を出してくれた。


「しょうがないなぁ…。じゃあ弟×兄と兄×弟ならどっち?」


実際に弟がいる俺に聞くことか?と思ったがこれに答えなければアイスピックが待っている。アイスピックはさすがに俺でもヤバイだろ。たぶん。

俺はどちらを決断するか、悩んだ挙げ句に兄×弟と答えておいた。





 
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