取り引きをした。その直後に血を吸われた。
初めて血を吸われたときのことを静雄は鮮明に覚えている。禁忌を犯す背徳、自分が自分でなくなるような感じ、体内から確実に奪われていく血液と生命力。その時に感じた形容しがたい恐怖が記憶から失せることはない。

臨也は取り引きした通りにきちんと吸血鬼たちを制御してくれた。そのおかげで人間を襲う吸血鬼たちは減少し、共生の道は開けたのだ。静雄は自分のしたことを後悔はしていない。ただ、なんというか無性に臨也を殺したくなる。
それからはこうして毎晩毎晩臨也は血を吸いにくるのだ。

「ほら、そろそろ吸わせてよ。君以外の血は吸えないんだからおなかすいてるんだ」
「……さっさと飲めばいいだろうが」
「生意気」

臨也の頭が首筋に埋まる。何回か舐めたかと思うと容赦なく歯を立てた。

「痛ッ……!」

この痛みはいくらやっても慣れるものではない。静雄は臨也の頭を抱え込んで苦痛に耐えた。血を吸われる感覚が気持ち悪くて、でも気持ち良くもあって。矛盾する感情と共に静雄の脳内は霞がかったようにぼんやりとする。
ただの吸血行為だ。そう割り切ってしまおうとしても体の奥が熱くなる。
抗えない欲望が静雄の中でチリチリと燃えていた。はやく終わってほしいと無理矢理考えながら、無限に等しい時間を耐える。実際はそこまで長くはないのだが。

「……ん。ごちそうさま。今日もおいしかったよ」
「っは……ぁ……」

臨也の牙が離れていく。首筋にはくっきりと吸血痕ができていた。血を大量に吸われたため力がはいらずに静雄は床に倒れた。臨也に抱き留めてやる優しさなんてあるわけがない。
臨也は床に寝転がった状態で体を丸める静雄を見下ろす。静雄の様子は一目で異常とわかるものだった。息は荒く顔は赤い。陰部はしっかりと布を押し上げている。欲情しきった体だ。それを見て臨也は舌なめずりをした。

「吸血されると性欲が増すっていうのは本当なんだよね。ほらシズちゃん、いつも通り浅ましくおねだりしなよ。君は俺にどうしてほしいのかな?」
「っう……!」

静雄が睨むも涙に濡れた瞳じゃ煽っているようにしか見えない。そう、これはいつものことだった。毎晩臨也が静雄の血を吸って、その流れのままセックスする。当たり前となっている日常は非日常のまま、受け入れがたいものだった。静雄は自身の快楽を必死で抑え、にやりと口端をつりあげた。
当たり前となっている日常は非日常のまま、受け入れがたいものだった。静雄は自身の快楽を
「性欲増して俺のこと抱きたがってるのは手前のほうだろうが、この淫魔野郎」

手のひらで柔らかく臨也の陰部を揉む。臨也だって人のことを言えないくらいには勃起していた。このまま性器を潰すことだってできるのにあえてしないのは、静雄自身臨也を求めている証拠だろうか。

「シズちゃんったら調子に乗りすぎだよ。生殺しのまま放置されたいの?」
「手前こそその勃起したのぶら下げたままでいいのか?」
「くっ…………」

睨み合うこと数十秒。結局先に折れたのは臨也だった。

「降参!血を吸った相手じゃないとヤる気しないから、他で抜くわけにもいかないしね。だからシズちゃんは俺に抱かれることを喜び讃えるがいいよ!」
「……なんで手前はいつもそんなに上から目線なんだ?」

臨也の態度も毎度のことだから静雄もさして気にもしない。ヤると決まったからには二人はさっさと服を脱いだ。畳むことなく放り捨ててベッドに戻る。
静雄も臨也も自分がどういう役職なのか、種族なのかを今だけは忘れるのだ。

一人なら十分でも二人乗るには狭いベッドに静雄は背を預ける。
足を大胆に開いて睾丸の下、これから臨也を受け入れる秘部をくぱりと曝した。

「ほら、入れろよ」
「一度くらい君に色気を求めてみたいものだ」
「んなもん求めても無駄だっての」
「わかってても色気がほしいんだよ」

溜め息混じりに性器を出した臨也だったが、色気がどうのこうの言っていたわりには準備万端だった。開いた秘部に先端をこすりつけて、なかなか入れようとはしない。

「さあシズちゃん、今こそ色気全開で求めるときだ。俺を本気で興奮させてごらん。じゃなきゃ君の性器から血を吸うことだって厭わない」
「どんな脅しだよ!ほんっと最低だな手前は……!」
「なんとでも言うがいいさ!ほらどうするの?」

静雄はどうするべきか迷った。色気なんて出せるはずがないし出したくもない。まず色気の出し方自体理解不能だ。しかし性器から吸血されるなんて考えるだに恐ろしい。臨也はやると言ったらどんな手段を使ってでもやる男だ。静雄の選択肢は最初から一つしかないと言える。
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