臨也の中はまだまだきつかったが、無理矢理こじ開けるようにして律動を始めた。はっきり言って動きづらいことこの上ない。臨也の口からは苦痛の声が漏れているが、時折甘いものも混じる。順応が早いのは媚薬のおかげか人外だからか、はたまた臨也が淫乱であるだろう素質だろうか。どれだっていい。静雄にとって今臨也を抱けるのならどうだっていいんだ。

「なあ、どんな気持ちだ?祓魔師に犯されちまってよぉ……」
「うっ……ふぐぅ……」

向かい合うように体を反転させると中をぐるりと回されたことで呻く。臨也の言葉なら大方予想がついた。
「死ね」「ありえない」「殺してやる」「これならいっそ」「死んだ方がましだ」
憎悪にまみれた目で睨み、喉を噛み切ろうとするくらいはしそうだと考えていた。しかし臨也はそんなことしなかった。ふわりと、およそこんな時には似つかわしくない顔で微笑む。静雄の背に腕を回して頭を胸に押し付けた。

「……お願い…………、もっと、して…………。……………………すき」
「はあ?」

臨也の口から出たのは予想とは大きく外れた言葉。静雄の理解の許容量を越える言葉。
静雄の脳はそれを受け入れることを拒否した。脳の電気信号は「セックスをしろ」と命令を出す。臨也の言葉なんて考えることもないくらいに。臨也に再びあの言葉を言わせないために。これもある種の現実逃避か。
臨也が言った好きというのが静雄のことなのか、それともセックスのことなのかはわからずにいた。後者だとしても静雄は聞きたくなかった。

「あ、ぁ、っう……んぅうう!や、ぁは、……は、ぁあああァあ!」
「っ……」

女みたいに嬌声をあげる臨也を蹂躙し続ける。白かった体はほんのりと桜色に染まり、全身で快楽を訴えているかのようだった。臨也の体が無性に美味そうに見える。汗の浮いた首筋がやたらと目を引きつけて、静雄は体を寄せて口づけた。より深いところまで性器が入ったこと、静雄から口づけられたことで臨也は小さく声を上げる。

「や、深…………あっア!あ……いッ!?」

口づけたと思ったのも束の間、静雄は大きく口を開けて臨也の首筋に噛みついた。臨也は打ち上げられた魚のように、何度か大きく体をはねさせながら静雄の頭をわし掴む。静雄の歯が臨也の皮膚を突き破って血を溢れ出させた。勢いよく吸って血を啜るたびに臨也の悲鳴は高くなる。
普段とまったく逆の立場にされた臨也は未知の快楽と恐怖で気が狂いそうだった。

「う、ふぇ、あぁあああ!ひっ…………きゅーけつきのっ、ち、すうな……て、しんじらんないぃっ!」
「今まで自分がどんなことしてきたか思い知ったろばーか」
「……死ね!」

ギュウウウっと故意に中をきつく締め付ければ静雄は小さく声をあげた。してやったり、というような顔をした臨也に静雄のかろうじて保たれていた理性と糸がぶち切れる。

「上等じゃねーか……!」
「ぎっ!?あ、ぁぐぅううう!やら、やめて、激し……っあああぁあ!」

血のにおいが立ちこめていた。流血の場所は臨也の首筋と結合部からだ。真っ白なシーツに赤いシミが点々と付着している。結合部の方は乱暴な律動の摩擦で切れたんだろう。
その血のにおいに興奮していたのは、吸血鬼である臨也ではなく静雄だった。静雄は獣のように腰を振って臨也を貫く。どっちが化け物だかわかりやしない。

こんな強姦ともいえる行為だというのに臨也は笑っていた。愉しそうに笑っては静雄に先を促す。感じているのは快楽だけでなく、大きな痛みも伴っているというのに。この場合加害者である静雄には不思議でならなかった。
「手前は今まで憎み合ってた俺に抱かれて悔しくないのかよ。なんでそんな、黙って抱かれてんだよ!」
「………………」
「おい!」

臨也は少し考え込むようにしていた。臨也の中でも気持ちの整理がついていないんだろうことが容易に想像できる。
臨也はうまくまとまらない考えを、それでも必死に寄せ集めてようやく言葉を紡いだ。

「そんなの俺にもわからない……し、君だって何で俺を抱くの……?答えられる……?」
「……ちっ」

静雄は苦し紛れに舌打ちするとそこからはもう何もしゃべらなかった。静雄自身何も自分のことすらわかっていなかった、図星を指されたからだ。

「しずちゃ……しずちゃあ、ぁ、ああ……!イきそう……イ、くぅ!あ、やぁ、ぅああんんっ!」

臨也の精液が互いの腹を汚していく。静雄も臨也の中に出した。どくどくと熱く中を犯していく精液を感じながら、臨也は意識を手放していった。

「……殺るなら今しかねえよな」

臨也の中から性器を抜いて呟く。まだ欲情の残る体で銃を手繰り寄せた。臨也の額にごり、と銃口を押し当てる。この銃の引き金は軽い。あとはもう、人差し指一本だけで、臨也を。

「あばよ…………、臨也」





 
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