静雄は聖水の効能を思い返していた。聖水は本来なら魔を滅する作用がある。聖職者が念をこめた聖水は破壊力抜群だが、一般人が使ったとしてもそれなりの効果は得られる優れものだ。新羅が言うにはこれは薄めだから動きを鈍らせる程度らしい。だがこれはどうだろう。臨也は動きが鈍るどころか元気が有り余っている。とんだ変態行為を働くくらいには。これが聖水の効果なはずがない。
そこでようやく静雄は気づいた。新羅がくれたのは聖水でも何でもなかったのではないか。そして臨也の行動からするに、あれは媚薬だったのではないかと。

「……騙された…………」
「君って、ほんとばかだよね……ん、もう我慢できない……ぁ」
「あ!?」

臨也は静雄の下半身を寛げて性器を取り出していた。まだ萎えたままのそれに懸命に舌を這わす臨也の姿を見て、静雄は気が遠退きそうになった。もう二十数年生きている静雄たがフェラチオされるのはこれが初めてである。
しかし臨也を前にしてみれば意識を飛ばすわけにはいかない。何とか持ちこたえた静雄は臨也を見下ろした。うまいのか下手なのかは比べる相手がいないのでわからない。
視覚的には……かなりクる。天敵のフェラチオで静雄はだいぶ勃起してきていた。信じたくない事実だが。

臨也は飴を舐めるかのようにしつこいくらいに舌を押しつけてくる。時折牙が見えるが当たらないように配慮しているのか痛みはなかった。それがどうにも違和感を感じてしまう。
しばらくそうしていたのだが静雄が完全に勃起すると臨也は口を離し、代わりに性器をまじまじと見つめた。中途半端に切り上げられた静雄としてはたまったものじゃない。

「ああ……美味しそう……」

うっとりとした表情で舌なめずりをした臨也は、もう一度大きく口を開いて静雄を迎え入れようとした。だが静雄は待ち望んでいたはずのそれを阻止した。臨也の顔は途端に不満げなものに変わる。

「……なんで邪魔するのかなぁ」
「なんで、って噛むつもりだったろ。誰がそんな真似させるか」
「だって血流が高まって勃起してるんだよ?こんなに美味しそうなものはない。少しくらいいいでしょ」
「少しでも血吸われたらアウトだろうが。それにそんなとこ噛まれたら……わかるだろ?」

男の一番の急所である性器に歯を立てられたらどういうことになるか、想像するだけで性器が縮こまりそうになる。
臨也も同じものがついているというのに、よくもまあえげつないことを言うものだ。
これ以上臨也にフェラチオをさせるのは身の危険が生じるためやめた。そもそも静雄はこんなことをするために来たのではない。しかし欲望は静雄の中でぐるぐると渦巻いている。今の静雄は祓魔師という立場を忘れ、性欲を発散することしか考えていなかった。臨也の服に手をかけ脱がす。臨也は微塵も抵抗しなかった。

「ふっ……あーあ、シズちゃ、あ……いいの?もう引き返せないよ……?」
「ちんこおっ勃てたやつが何言ってやがる。小せえちんこしやがってよぉ、吸血鬼ってこんなもんなのか?」
「シズちゃんのが人間とは思えないほどでかいだけだよ!まったく…………」

静雄は自分の性器と見比べながら臨也のそれを弄る。皮はちゃんと剥けているし大きさもおそらく平均だろう。臨也の言うとおり静雄が化け物じみた性器を持っているのだが、静雄は臨也の言うことなんてただの負けず嫌いだと思っていた。
静雄の手の中で蜜を零す也の性器は立派な男性のものだ。それなのに興奮してしまう自分に静雄は嫌悪した。あの媚薬はにおいを嗅いだだけでも効果があるものだったんだ、と自分に言い聞かせた。
あの臨也にあんな感情を抱くなんて、ありえない。

誠に不本意だが静雄にはこの欲望を鎮める道しか残っていなかった。相手が臨也だろうと関係ない。いや、むしろ臨也だからこそできるような、そんな気までした。
臨也をうつぶせに寝かせてから腰だけを高くあげさせる。白い尻だ。狭間は淡く色づいている。ここは女性器ではない。女のように受け入れるための場所ではなく、ただの排泄器官だ。それなのに嫌悪感を感じないのはなぜだろうか。臨也は吸血鬼ではなく淫魔の類なのではないかと静雄は思う。

きっと入れるからには慣らしたほうがいいのだろう。普通は。だが静雄にとって臨也は忌むべき対象であり、体を気遣ってやる必要などないのだ。なるようになるだろうと性器をあてがう。意味もなく「アーメン」と呟いて臨也の中へ侵入を果たした。

「ふ、ぅあ、はぁあああっ!あ……ぎ、あ……痛、いぃ……!」
「ははっ、手前のそんな顔初めて見た」

涙やら鼻水やら、いろんな体液で汚れきった臨也の顔を嘲う。あれだけ退治したかった臨也を、求めていたのとは別の方法で屈伏させている。ぞくぞくと熱が高まっていくのを感じていた。もう止まることなんてできるはずがない。
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