止まれない恋路の迷走路


十代は、恋に疎いんだ。
「…どうしたの?十代くん?」
ほら、顔が真っ赤。
「遊戯さん…俺…」
「ん?どうしたの?」
首を傾げるのは、決闘王。
全くお前は十代の事をわかってないよ。
「俺…遊戯さんの事一生尊敬します!」
「あ、ありがとう」
十代の気迫に押された決闘王は、人形のようにコクコク頷く、両手を握られ吸い込まれそうな瞳を見せる十代。これじゃあ、プロポーズじゃあないか。
…再度言うよ、遊城十代は、恋に疎い。


閑散とした夜。僕は十代を見つめた。明日の仕込みとか言うのをしているらしい。大徳寺は猫と戯れている。
僕が十代を見ると、十代もこちらを向いて口を開いた。
「なぁ、ユベル。」
「どうしたんだい?十代。」
十代に話かけられるなんて久しぶりだ。
なんだか嬉しい。
「十代、僕で良ければなんでも聞いておくれよ。」
「遊戯さん…っていいよな。」
なんだ、決闘王の事かい。
今の僕の表情は確実に“つまらなそうな顔”をしているだろう。十代が気づいてるはずないけどね。
「どういう意味だい?」
とりあえず、僕は聞き返した。

「強いし、カッコイイし、男前だし、優しいし、可愛いし、美味しそうだし…って意味で。」
…‥最後二つはともかく。
とりあえず僕は、手に拳を作りながらスラスラといいのける君を尊敬するよ。
「尊敬って事かい?」
「そんなの最初から!」
十代の怒り方に思わずくすりと笑ってしまった。
「あ、でも最近違うんだよな。なんと言うか。もっと別の感情がさ…。ぐわーって!ドキドキって感じなんだ!」
僕は悟った。
十代は、恋をしている。
間違いなく恋だ。
いや、知っていたけど。
今まで、曖昧な疑問が明らかになり、僕は目を伏せた。
僕以外の奴を好きになるなんて。
この際、いいや。
僕も決闘王に対しては、気分を害しているつもりはない……あの鈍臭さは何とかならないかとは思うけど。二人が仲良くしているのを見るとこちらも楽しくなる。…ただ、これだけは言わせてくれないか。決闘王も僕が見えるんだから僕も混ぜてくれてもいいんじゃないかな。そういう思いを込めた一言。
「酷いよ…十代。」
「え、何が?」
十代からの即答。
……酷いよ十代。


光り輝く太陽、今日も快晴だ。
「やっぱり、尊敬する人にはアイサイ弁当だよな!」
十代、キミは自分の感情に気づいているんじゃないか?
半分、いや半分以上吹っ切れた僕は、十代の行動に冷静に突っ込みを入れていく事にした。
「十代、愛妻弁当って意味わかって言っているのかい?」
「いや、全然。」
首を振る十代に僕はため息をついた。
全く十代、君っていう奴は。

太陽が真上にあるこの時間、僕は手で日光を遮りながら太陽を見つめた。
「ゆ・う・ぎさーん!」
会場に響く声、僕はそちらを向く。
決闘大会の午前の部が終了し、十代は、決闘王にタックルした。
余りの衝撃に飛ばされた決闘王を見て、少し笑いたくなったが、正直タックルしあえる体なのは羨ましい。
…と、言うより弁当は大丈夫なのかい?よれているんじゃないのかい。僕は不安になる。
「十代くん?」
決闘王も決闘王だ。
二人とも本当に鈍い。
「遊戯さん!俺、貴方のためにアイサイ弁当作って来ました!!」
まだ、知ったかぶるか!!
愛妻の弁当をわかってってるのかい君は!?
「アイサイ弁当って…どういう意味だい?」
決闘王は頭に疑問符を、十代は数週間冷凍庫に入れていた餅のように固まっていた。
そりゃ今まで意味がわからないまま言っていたからね、自業自得だよ。
そして、十代は「今日は良い天気ですねー。」と話をはぐらかし始めた。十代に対して文句は言いたく無いけど、もう少しアカデミアで学力を付けていた方が良かったんじゃないかな?
「遊戯さん。大好きです。」
「僕も好きだよ。十代くん。」
全くこの二人は!!
愛しあっているのに、気がついて無い!
気がついたら僕は下唇を噛んでいた。
この怒りは、十代を取られたからでも、二人の中に入れないからじゃない。二人が疎いからだ。見ていてイライラする。
「本当、尊敬してます!」
「ありがとう。」
「大好きです!」
「僕もだよ。」

十代の表情が明るくなり、笑顔になる。そして、彼の表情は段々険しくなり、暗くなる。
「でも、俺の好きの場合違うんです。」
「何がだい?」
「…いえ、まだよくわからなくて。」
「……そう。」

ああ。
十代は、自分の心に気が付き始めている。決闘王を尊敬している心が、変わってきている。十代の心が本当の愛に…気がついた時、

止まった足は走り出す。
走る足は止まらない。
じれったい思いは、おしまい。
彼の追いかける足は、更に早くなる。
追いかけて、追いかけて。
捕まえて抱きしめて、思いあって。
それが愛なんじゃないかなぁ。

…さて、今日は赤飯にでもしようか。
まぁ、僕は実体が無いから作れないけどね。

「遊戯さん……大好きです!」
十代の声が会場に響く。


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