あなたとオレは遠い存在で。オレには手が届かない。
そう、思っていた。



運命なんてぶち壊せ



武藤遊戯――伝説のデュエルキングでオレの憧れの人。
デュエリストの中でも特に有名で、彼を知らないデュエリストはいない。

初めてデュエルアカデミアへ向かった日。
初めて遊戯さんに会った。
デュエルアカデミアの卒業式の後。
初めて会った遊戯さんに貰ったハネクリボーに導かれてもう一度会った。

そしてその導きで、過去の、ファラオを宿した遊戯さんとデュエルをした。

久しぶりに胸がワクワクした、楽しいデュエルだった。

それ以来、まったく会っていない。
あの出会いが運命だったのならば、オレと遊戯さんはまた会えるだろうか。
オレがあの遊戯さんの傍にいられるだろうか。

「遊戯さん、もう一度、会いたいです。あなたの傍に、いたいです」

あの出会いを運命と思ったこともある。
あんな出会い、運命じゃなきゃありえない。そう思っていた。

……でも。

彼の世界に自分はいるのだろうか。

遊戯さんの周りには、たくさんの人がいる。
家族、学校の友達、そしてデュエルを通じて出逢ったたくさんの人たちが。

いつも傍にいる遊戯さんの友達が羨ましい。
一緒にデュエルをして、旅をして、泣いたり笑ったり、たくさんの時を過ごした。
それがオレにはどう足掻いても叶わない夢で、どんなに願っても叶わない。
オレにはオレの世界が、遊戯さんには遊戯さんの世界がある。
まるで違う世界の住人だ。
これが、オレの運命だとしたら――

「これが、オレの運命だとしたら……オレはもう二度と遊戯さんと、会えない」

ずっと憧れてた。
本物の遊戯さんは優しくて強かった。
この人の傍にいたい、そう思った。

運命はオレと遊戯さんのいる未来はないというのだとしたら、

「そんなの納得できない」

オレの望む未来を否定する運命なんて、オレは認めたくない。

遊戯さんがオレに微笑んでくれて、オレとデュエルしてくれて、傍にいてくれる。
そんな運命を、オレは歩みたい。
一緒に旅をして、たくさん笑いあいたい。
遊戯さんじゃないと、この人じゃないとイヤだ。遊戯さんじゃないとイヤなんだ……!

このままグズグズしていたら他の誰かにとられてしまう。
遊戯さんがどこかへ行ってしまって本当にオレと遠い世界へ行ってしまったらもうどうしようもない。
だったら今度はオレが会いに行く。

そして会ったら言うんだ、

あなたにずっと憧れてたって。
あなたが大好きでたまらないって。傍にいたいって。

「遊戯さん、あなたに会いに行きます!」

納得のいかない運命になんて惑わされない。
オレの運命はオレが決める!

「運命なんてぶち壊せ!」



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