彼方の背中を見続けた
また、だ。
あの人はいつも、ここにはいない遠くの誰かを見つめている。
悲しそうに、幸せそうに。
−−−−−誰か、なんて分かりきっている。
「どうか、しましたか」
ベランダの手すりに寄りかかって外を眺めている背中に声をかけた。
こんな時に話しかけるなんて、自分の器の小ささに笑ってしまう。
間違いなく、俺は嫉妬している。あの人が想う、ここにはいない彼、に。
「遊星くん、・・・・・・・ううん、何でもないよ」
さっきまで見せていた表情を隠し、綺麗に笑う。
痛みも、弱さも全て隠して優しい笑顔を向けてくれる。
俺じゃ、駄目なのか。
「遊星くん?」
「俺が、います。あなたの傍にずっといます・・・・だから、」
そんな、つらそうにしないでください。
衝動的に、その小さな身体を後ろから抱き締める。
何度、伝えただろうか。
「好きです・・・あなたが、好きなんです」
身体を抱き締める手が震えている。
「遊戯さん、・・・」
「・・・・・ありがとう、君の気持ちは嬉しいよ」
抱き締める手の上から、そっと手を重ねた。
る。
あとどれくらい待てば良いのだろう。
あなたは、いつになったらこちらを向いてくれますか。
今でも、その背中をただ見つめるだけしかできない。