「あれ?早いな。」
ガチャ、と台所の扉を開けると眠気眼には少々厳しい金髪。眉間のシワがより深くなった。
「…痛くて眠れない。」
うちのコックは早起きだ。日が昇るのとほぼ同時に起きて、クルーの朝食を作る。
「どこが?」
「腰、」
私は朝が苦手で、おまけに睡眠不足になると体調を崩す体質で、彼とはまるで逆だった。
「………誰と寝た?」
「馬鹿じゃないの…も、朝から怒鳴れないからね私。」
ギラリと光る目。でも手は動いたまま。その手で、このひとは、今までどれだけの人を抱いたんだろう。ぼーっと、その綺麗な手を見つめた。
「腰痛持ちか…ご苦労なこった。」
「んー、…」
「ねむい?」
「ここあったかいし寝そー…」
「寝んなよ。寝たら襲う。」
「ん、…んー…」
そんなこと気にするな、とでも言うように落ちてくるまぶた。テーブルに突っ伏して目を完全に閉じた。今日の朝食なんだろ。いいにおい。
(――キスされた、気がした。)
20101225 修正加筆