瓦礫の山、焦げた臭い、無惨な姿のマフラー。そしてそれを冷たく捨てる、悪魔。
「―――…酷いひと、」
ぽつりと呟いた言葉は彼の耳に届いたようでニヤリと口元に笑みを浮かべながら私を見た。
「私は悪魔ですから。」
私は知っている。そのマフラーの持ち主と彼の関係を。だからといってどうというわけでもないけれど、彼は私の態度が不満のようでコツコツと黒の革靴を鳴らしながら私のもたれかかっていた壁に手をついて、私を閉じ込めた。
「貴女も酷い。」
「なにが?」
ワインレッドに可愛くない私が映る。表情なんて変えてやらない。どうせ捨てるのでしょう、そのマフラーのように。何も感じない、何も知らない、そんな顔をしながら。堕ちたら、それで終わり。
「貴女はいつもそうだ。」
「――……、」
長く冷たい人差し指が私の首筋をなぞる。
堕ちればいい、堕ちてしまえ、と私を誘う。
「何も…興味が無いような顔をする。」
「私はこんなにも貴女を…愛しているのに、」
その指は私の髪の毛を取り、口付けた。
彼は、私の心臓の動きにきっと気付いてる。でも、堕ちてなんかやらない。堕ちない。
(一瞬で終わるものなどいらない。永遠だと誓ってよ。)
20101225 修正加筆