臨也と出会ったのは、高校の入学式だった。中学からの友達である静雄と、静雄の小学校のときの同級生である新羅、そして新羅の中学からの友達の臨也。この環境下において、臨也は自分の大嫌いな静雄の一番親しい女友達である私に、興味を抱かない訳がなかった。臨也と静雄が毎日のように喧嘩を繰り広げ、臨也が静雄を陥れる度に私は臨也を嫌悪した。
でも、その反面、つかみ所の無い臨也を気になっていたのも確かだった。いつか臨也が怪我をして、保健室で新羅の手当てを受けているのを見たとき、胸が痛んだのだ。それは、臨也への気持ちが恋だということを証明していた。
臨也は、私に度々嫌がらせをした。学校に流れた私の噂は、そのほとんどがきっと臨也が犯人だろう。それでも、何でもないときは普通の友達だった。優しい目を知っている。優しい声を知っている。それを知ってしまったから、嫌いになれなかった。


その時が訪れたのは、高校3年の秋。
その頃には、臨也とは悪友のような、そんな関係になっていた。たまたま通りかかった校舎の片隅、臨也の声がして、聞き耳を立てたのがいけなかった。

「折原くんって、名字さんと付き合ってるの?」


私には無い、甘く、高い声が響く。自分の名前が出てきたことに驚いた私は、つい足を止めてしまった。声の主は、校内の臨也の信者の中でもリーダー格の女子。
付き合ってるなんて馬鹿な話だ。私と臨也のどこを見てそう思えるのだろう。


「まさか。付き合ってないよ」


臨也の返事に、私はただ納得した。
そして後悔する。


「でもすっごく仲良いよね〜?」


そこでその場を去れば良かったのに。


「そうでもないけど?あんなの、友達でもなんでもないよ」
「そーなの〜!?」
「だから君は気にしなくていいよ」


"友達でもなんでもない"


息がつまる。私は本能的にその場を後にした。そうだ、私は、臨也の大嫌いな静雄の友達。好かれる要素なんてどこにもない。むしろその逆だ。分かってる。分かってた。なのに、なんで傷付くの。


(本人の口から聞くと、ショックだなあ…)


彼は、この3年、私に対してどういう想いで接してきたのだろう。臨也は、その心の中で何を思いながら、私と接してーー


「……っ」

あの言葉が脳内をぐるぐる回る。あの言葉を聞いてしまったからには、私は今までのように臨也に接するわけにはいかなかった。
すべてが、嘘だったのか。
この膨らみ続けた想いを、針1つで割ることができればどんなに楽なんだろう。




20130403


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