怖かった。
この瞳の奥に触れてしまったら、戻れなくなることが分かっていたから、知らないフリ、気付かないフリをしていたのに。

「名前」
「ゾ、ロ…」

情欲に満ちた目で、私を見つめて、迫る愛。この目だ。この目に、欲情、する。
もう、私たちの間の距離はほとんどゼロ。離れられなくなってしまうまで、あと数秒。そして、唇が重なる。

「ん、…っ、ふ、」
「……っは、名前」

飢えた獣のように、やっとありつけた食事を、私の唇を、貪る。私も息継ぎをするのにいっぱいいっぱいで、余裕なんて無かった。
ゾロは私の唇を堪能しつつも、抜け目なく、私がキスに気を取られている間に服の裾から手を差し込んだ。熱くて大きな手が横腹を撫でて、下着の上から胸を揉む。

「は、…ぁ、ゾロ、」
「……足りねェ」
「……っ、ん」

服を脱がされている間に酸素を取り込んで、また口付けて、下着も取り払われる。

「っ、ん、」
「…、?」

負けじと必死にゾロの服を掴むと、何をしたいのかとでも言うような顔でゾロは私を見た。

「――ゾロも、脱いで…?」
「ん、」

きっと、私、今、やらしい顔してるんだろうな。
Tシャツを脱いで鍛え上げられた上半身を惜しげもなく晒すゾロに目を奪われながら、私は脳の片隅で自分を客観的に見ていた。

「えっろい……」

程よい厚さの大胸筋と、綺麗に割れた腹筋。それを縦に指でなぞると、ゾロの身体が震えたのが分かった。

「……お前もな」
「っ、!?ひ、ゃ…!」

ゾロは、余裕が出てきたのか、フ、と笑みを漏らした。何も纏っていない上半身を彼の手が這って、その手のひらの中で胸が形を変える。私の唇を独占していたそれは、首筋を舐め上げて、どんどん下へ降りていく。

「あ、…っ、」
「……下も脱がすぞ」

その言葉は許可を得るためのものではなく。待って、とか嫌だ、とか制止する言葉を発する前に下半身の服や下着も取り払われた。

「ちょ…!ゃ、だ…っ」
「…すげ、濡れてる」
「…っ!!」

そんなこと、いちいち声に出さなくたって分かってる。
ゾロが、私の身体に触れて、キスして、それだけで私だって欲情する。もっと、もっと、欲しいと願う。

「…ん、っ、ぁあ、ッ」

ぬぷ、と膣に侵入してきた指は中を確かめるように動いて、それがゾロの指だと思うと、たまらなくなって、締め付けてしまう。そして、ゾロは私の中を指で犯しながら、胸の突起を口で転がして私を追い詰めていく。

「悦い顔してんな。声も」
「っ、ぁ、ゾロ、…っは、」

両手を伸ばして、ゾロの首に回した。じくじくと奥が熱くて我慢出来ない。もう、

「…いれ、て」
「――……馬鹿が、」

壊したくなんだろーが、!

そう言われて、素直に、壊してもいいよって思った。
私のおねだりは、今にも溢れそうなダムを決壊させるには十分だったようで、その熱い塊は、私の中を押し拡げるように侵入してきた。

「あっ、あ、ッん、ゾロ…好き、っ」
「は、っ、あ、いして、る…名前、!」

ゾロの言葉は、じわりと私の心を満たしていった。どうしようもないくらい、幸せを感じて、最初の葛藤なんて強がりにしか過ぎなかったと気付く。最初から、私はゾロが好きでたまらなかったのだから。



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