薄く開けた目に朝の光が射し込んだ。ずっと閉じていた目にその光は辛く、再びぎゅっと目を瞑って寝返りを打った。

(……あれ、?)

カーテンは閉めていたはずなのに、少しだけ開いていて。
まだ開きたくないと反抗する目を擦る。

「……んー……」

力無く仰向けになると見慣れた白い天井。
今、何時なんだろうと、側に置いてある携帯を手に取った。9時43分。

「起きました?」

突然、本来ならば此処にいないはずの声がしてドキリとした。しかしその声は聞き慣れているもので、ああ、合鍵を使ったのかと瞬時に理解。声のする方へ顔を向けた。

「バーナビー、来てたの」
「ええ。今日はオフなんです」

久しぶりですね、と彼は私の寝ているベッドに腰をかけた。
ヒーローをしている彼と、社会人の私。時間が合わなくて1、2週間会えないことなどザラにある。今回もそうだった。
私は昨夜、やっと山積みになっていた仕事を片付け、日付が変わった今日帰宅。化粧を落としてシャワーを適当に浴びてベッドに倒れ込んで、今を迎えた。

「すみません。カーテン、ちゃんと閉めたつもりだったのに…開いてたんですね」
「ん…いいよ。…あ、なんか、良い匂い」

くん、と鼻から空気を吸い込むと、香る甘い匂い。彼は「あぁ、」とキッチンの方を一瞥した。

「朝食を作っておきました。フレンチトーストとトマトのサラダ、好きでしょう?」
「えー!ありがとう!だいすき!」

大好物の名前を聞いて、思わず起き上がった私に彼はフッと笑って、

「名前、」
「ん」

おはようの、口付けを。

「グンモーニン、名前」
「おはよう、バーナビー」

名残惜しく離れた唇が愛しいと思った。






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