セピア -sepia- 4 「さーさーのーはああーさあーらさらあー」 「みどり、うるさい」 「のおおーきーばーにーゆーれええーるー」 「おい」 「んがっ」 がしりと後ろから掴まれたヘルメット。 体勢を崩しそうになって、慌ててブレーキをかけた。 「もー、柊さん危ないやろー」 「近所迷惑だっつの」 「この辺家ないやん」 「うっせ」 「あぐっ」 容赦無く飛んできたデコピンに額を押さえながら、また前を向く。 田んぼと畑のあぜ道。キーコキーコと二人分の重さに悲鳴を上げる自転車。蝉の声。膝丈のスカートはやっぱり暑い。 「なあ、今年は織姫と彦星会えるんかなあ」 「前見ろ」 「最近会えとらんから、会えるといいなあ」 「ちょっとお前ほんと運転荒い」 「うっさいなー、運転手交代するー?」 「しない」 「ですよねー」 キーコキーコ、自転車が叫ぶ。 ジリジリと照りつける太陽。空は青く澄んでいる。 「……まあ、いつかは会えるんじゃね」 小さな君の呟きは、遠く雲の向こうに消えた。 ―fin― * 20140707 20分クオリティの七夕SSです。 Twitterに上げておりました。 お前今年もセピアかよと言わないでください。 ⇒ 次へ / 一覧に戻る (C)After School |