10.
夜中に近くなる頃。
同窓会は一先ずお開きになり。
二次会に行くもの。
明日の為に帰るもの。
と別れていった。
楸も聡も、それぞれの思惑で、
二次会には行かずに、二人で帰路に立っていた。
「なぁ、今日聡の家に行っていいか?」
「ぁあ?どうしたのよ。」
「んー、いや、なんとなく、、」
「このまま帰りたくないってか?」
「まぁ、そんなとこ」
杏の事か…
と、聡は悟った。
「別に良いけど?ゆっくりしてけば?」
「んー…」
顔には出ては居ないが、心は在らずの返答に、聡は小さく笑う。
「お前は、女々しいね。日本で今一番売れていると言われている天下の俳優がさ。たった一人の女に。」
と、笑うと
「あ?」
と、苛立った様に、楸から返事が返ってくる。
まぁ、こんな風にさせた、杏にも責任はあるんだけど。
杏も素直になれば、こんなになることは無かったのにね。
と、思いながらも
元々の性格が飲み込む方だから、難しいのかも知れないけど…
楸は、変な所で気配り出来るくせに、基本鈍だからなぁ…
と、小さくため息を吐く。
部屋に入り、何本かビールを差し出す。
瓶の蓋を開けて、楸は一気にすると。
また新しく手に取り開ける。
「あんまり飲むと仕事に支障でるよ。」
「ん…」
と良いながらも、口に付けているから。
話を聞く気は無いらしい。
「なぁ、お前の事だから、どうせ杏が来てないから、荒れてるんだろ?」
そう言うと、感極まった様に、口にビールを流し込み、苛立つ様に瓶を置く。
また、手に取り、蓋を開け口元にやる。
「アンジェは、俺の事嫌になったかな…」
「嫌になって無いから、会いたく無いんじゃない?」
「会いに行った。だけど、また住所変わってんの…、、」
じろりと聡を睨む。
知ってるんだろ?
と、その目は苛立ちにギラリと輝いていた。
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