夕暮れの聖域。
私はシュラと手を繋ぎ、磨羯宮までの長い十二宮の階段を、ゆっくりと下りていた。


「ねぇ、シュラ。」
「ん? 何だ、アレックス。」


聞き返すと同時に、強く握り締めてくるシュラの手は温かい。
ずっとずっと変わらない、彼の手の感触。


「子供の時から手を繋いで、この階段を上る事は何度もあったけど、こうして二人で下りるのは、もしかして初めてじゃない?」
「確かに……。不思議だ。まだ、こんなにも初めての事があるなんて、な。」
「だからね。これからの時間、シュラと一緒に、まだ知らない沢山の事、いっぱい知れたら良いなって思うの。」
「あぁ、そうだな。そうしよう、アレックス。」


見上げたシュラの横顔は、夕陽に赤く染まっている。
容姿は遥かに大人になって、格好良く素敵になったけれど、私の中では幼い頃に大好きだったシュラと、今でも何ら変わりなくて。
彼の背中におぶさって見た、あの真っ赤で大きな夕陽を思い出し、懐かしさに心が揺れた。


「シュラ、ちょっと良いかな?」
「ん? どうした?」


繋いでいた手を離してもらうと、私は直ぐに階段を駆け下りた。
彼から僅かに離れたところで振り返り、悪戯な笑顔を浮かべる。


「ねぇ、私が何処かに隠れたら、今でもちゃんと見つけられる?」


その言葉にシュラは少しだけ驚いた顔をして。
でも直ぐに、私の大好きな、あのフッと軽く零れる笑顔をみせた。


「勿論だ。いつでも、何処にいても、必ず見つけ出してみせる。」
「じゃあ、私を探して、見つけてよ。いつでも、何処にいても。」


シュラに向かって手を伸ばす。
この僅かに離れた距離を、再び繋ぐために。


「見つけるさ。必ず、見つけ出す。」
「約束よ。」
「あぁ、約束する。」


私を追って、階段を駆け下りるシュラ。
その伸ばした手が、私の手を捉え、ギュッと強く握り締めた。


夕陽に赤く染まった手と手、強く繋がり合い。
私達は永遠に離さないだろう。
心の奥で結び付いた、この手だけは、絶対に……。



‐end‐





このお話は、出会った時から結ばれていて、そのまま変わらず、ずっと想い合い続ける、一生に一度のたった一つの恋があっても良いかなぁなんて、そんな思いから書いてみました。
山羊さまのERO暴走がどうにも止まらず、そっちの意味で大人向けになりましたが、色々と甘過ぎて胸焼けしませんでしたか?
最後まで書き終えて思う事は、私はやっぱり彼が好きなんだなぁと、そればかりです。

当初完結:2008.10.25
加筆修正:2015.07.02



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