いつもは何かと理由を付けて、ダラダラと夜遅くまで飲み続ける悪友三人なのに。
今夜はヤケにあっさりとお開きとなり、夜中まで飲み会が続くだろうと思っていたアレックスの期待は、いとも簡単に打ち砕かれてしまった。
夜も深くなり、アルコールが回ってしまえば、デスマスクもアフロディーテも雑魚寝状態でこの宮に泊まってしまうのが常の事。
そうなれば、シュラと二人きりになる事も、そこから何やら怪しい状況に追い込まれる事もないだろうと思っていたのに……。


「……はぁ。」
「何だ、その大きな溜息は?」
「どうして、こんなに早くお開きになったのかと思って。」
「飲み足りなかったのか? アレックスがそんなに酒好きとは知らなかった。」


そういう意味でない事くらい分かっているだろうに。
ふてぶてしいまでに平然と言ってのけるシュラの、何と憎らしい事か。
アレックスは苛立つ思いを抑えて、洗い物を進めていく。
ジャバジャバ泡立つ洗い桶の中で、ガシャリと食器同士がぶつかる音が響き、アレックスはスポンジを置いて、勢い良く蛇口からお湯を出した。
手に当たるお湯の温かさに、複雑に絡まる気持ちが滲んでいく。


「そんなに……、俺と二人きりになるのは嫌か?」
「それは……。あの、そうではなくて……、その……。」
「ストリップが余程、嫌だったという事か?」


アレックスは黙ったまま、ひたすら手を動かし続ける。
その横で、シュラも言葉を続ける事なく、洗い上がった皿やグラスを布巾で拭い、棚へと戻す。
暫くの間、続く沈黙。
そして、最後のお皿がカチャリと小さな音を立てて棚へと片付けられてしまうと、シュラは徐に口を開いた。


「アレックスは嫌かもしれんが、俺にとっては心から望むものだ。それがお前から得られる最高のプレゼントだからな。」
「シュラ……。」
「後片付けは終わったな。さぁ、続きを始めよう。」
「あ……。」


伸びてきた長い腕が、アレックスの腰を引き寄せる。
飲み会の和やかな雰囲気を引き摺ったままであった世界から、淫靡な非日常の世界へと、彼女を攫うように。
そして、その世界に足を踏み入れたが最後、そこから逃げ出すのは難しいのだとアレックスに突き付ける強引さをもって、横抱きに抱え上げる。


「悪いが、逃がす気はない。」
「お願いと言っても、駄目なの?」
「そうだな……。今日の俺は我が儘なんだ。誕生日というのもあるんだろうが……。」


その間にも、躊躇いないシュラの足は、先程と同じ場所、彼の寝室へと真っ直ぐに向かっていく。
彼自身の肉体と同じくらい力強い足取りで。
アレックスは服越しに触れる、その身体の熱さにグッと息を詰まらせた。
もう止まれないのだ、彼は。
それを如実に突き付けられて、息が止まりそうだった。


「アレックス……。」
「あっ?!」


ベッドの上に下ろされると同時に、身に着けていたカーディガンと女官服を剥ぎ取られる。
突然、肌を浚った冷たい部屋の空気に驚き、アレックスは両手で自らの身体を隠す。
その間に、シュラは自分の服を手早く脱ぎ捨てていた。
ハッとしてベッドから降りようと思っても、もう遅い。
下着のみの姿になったアレックスを、同じく下着のみになったシュラが、ベッドの上へと押し倒す。
それは決して乱暴ではないが、有無を言わせぬ力強さで。
アレックスは息を飲み、眼前に迫ったシュラの整った顔を、目を見開いて凝視するしかなかった。





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