「わ、わわわ、分かったわっ。す、ストリップでも何でもするからっ。止まって、シュラ。ね、お願いよ。」


今にも首筋に吸い付こうとしていたシュラの唇が、ピタリと止まった。
が、圧し掛かっていた身体はそのままに、当然、彼女の上から退けようとはしない。
降り注ぐ視線は鋭く、アレックスはゾクリと身を震わせると同時に、この人からは逃げられないと明確に悟った。


「何でも? 今、何でもすると言ったか?」
「い、いえ……、あの……。何でも、ではなくて……。す、ストリップを……。」
「そうか、ならば……。」


すると、一瞬の内に抱き上げられていて、面食らうアレックス。
何がどうなったのかと理解するよりも前に、違う部屋へと運ばれてしまう。
そこで目にした光景に、アレックスは再びゾクリと身を震わせた。
大きなベッド、キングサイズの。
そう、そこはシュラの寝室だった。
彼女をベッドの上に下ろし、ドアを閉め、シュラはおもむろに部屋の暖房温度を高くする。
アレックスはシュラの行動を、ただ眺めているしか出来ない。


「これから脱ぐのだから、温度を上げないと駄目だろう? 寒いと風邪を引く。」
「っ?!」
「さぁ、始めてくれ。」


ガタリ、椅子を引き寄せたシュラはベッド脇で腰を落とし、悠々とアレックスを見上げた。
ベッドの上がステージ、その横の椅子は観客席。
アレックスがストリッパーで、シュラが客――、好奇と羨望と欲望とを多分に孕んだ瞳で、女の肌と肢体をジットリと眺める男性客。


アレックスは覚悟を決めて、ベッドの上に膝立ちになった。
逃げられない、避けられないのなら、遣るしかないのだ。
大きく息を吐き、女官服の上から羽織っていたニットカーディガンのボタンに手を掛ける。


「……違う。」
「え……?」


だが、たった一つ、ボタンを外そうとしたところで、待ったが掛かった。
シュラの欲に満ちた瞳が、鋭く細められる。
その尖った視線に、アレックスは僅かに身体を震わせて竦み上がった。


「そんなのはストリップとは言えん。そんな普通にボタンを外しては、何一つそそられない。」
「で、でも……。」


そんな事を言われても、どうやって遣れば良いのかなんて分からないのだ。
ストリップなど遣った事もなければ、見た事すらないのだから。
ただ困惑ばかりを表情に滲ませるアレックスの姿に、シュラは軽く溜息を吐いた。
仕方ない、そう言わんばかりに立ち上がり、彼もまたベッドへと上がる。
ギシリ、シュラの体重を受けて、ベッドのスプリングが大きく鳴いた。


「あ、あの……。」
「アレックス、お前はそっちの端へ行け。」
「え、あ……。」
「俺がこっちの端で見本を見せる。アレックスは俺の遣ったように真似すれば良い。」


言うが早いか、ベッドの上に膝立ちしたシュラは、自らの身体を小刻みにユラユラと揺らし始めた。
ベッドの頭側から、ベッドの足側にいるアレックスに向かって、これ以上ない扇状的で誘惑的な視線を送りつつ、服の上から自分の身体にゆっくりと手を這わす。
太股から腰、臍から胸、首から頬へと、まるで自分の肌を愛撫するかの如くジットリと這う、シュラの大きな両の手。


その手が身体を這う間に頭と顔の角度は変わっても、熱い視線だけはアレックスから少しも外さない。
そして、唇の隙間からは声にならない息が細々と漏れ出てくる。
そうして何往復も服の上を手が這う度に、徐々に徐々に上へとたくし上げられていく彼のセーター。
その下から覗いているのは、まだ肌ではない、白いシャツだ。
だが、シャツが隙間からチラリと見えるだけでも酷く官能的に見えてしまい、まるで蜘蛛の糸に絡め取られたかのように身動きが取れなくなって。
アレックスはシュラの艶めかしい痴態から、目を逸らせなくなっていた。





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