――ボスンッ!


小さなベッドが二人分の体重を受けて、大きな息を吐く。
不安げに揺れるベッドが、ギシッと悲鳴に近い音を立てた。


「嫌っ! 止めて、アイオリア様っ!」


ベッドに組み伏されたアシュリルが、悲鳴にも似た大声を上げる。
足をバタつかせ、圧し掛かったアイオリアの身体を押し退けようと必死で暴れるが、相手は黄金聖闘士。
一般人のか弱い女性の抵抗など、彼にとってはあって無きに等しい。


それどころか、アシュリルが腕を振り上げれば、その腕を捉えて押え付け。
もがいて足をバタつかせれば、上がった足首を捉えて、返って良いように動きを抑え込まれてしまう。
いつの間にか開かされた両足の間に大きな身体を潜り込ませていたアイオリアによって、完全にアシュリルの動きは封じられていた。


「止めて、嫌……。お願い、アイオリア様……。」
「アシュリル。」
「お願い。こんな事――、んっ!」


身体で、動きで抵抗出来ないならば、せめて言葉で彼の行動を押し止めたい。
そう願って、必死に訴え掛けるアシュリル。
しかし、その言葉も直ぐに、アイオリアの唇によって飲み込まれて消えた。
もう、それ以上は、どんな抵抗も抵抗にはならない。
後はただ真っ白にとんだ思考の中で、アイオリアの仕掛ける全てを受け入れるしかなく、アシュリルはギュッと瞳を閉じた。


再び貪るように口内を味わうアイオリアの重い身体に押し潰されそうになりながら、その広い背中にアシュリルは必死で腕を回して、しがみ付いた。
深い口付けが止む事はなく、荒々しいキスを受けながら、目眩の嵐に放り出される。


服の上から、性急に全身を辿る手。
耳の奥に聞こえてきた、ビリビリと服を引き裂かれる音。
直接、肌に触れてくる熱い手の平。
胸を包む大きな手と、腿を撫でる期待に満ちた手。
誰にも触れられた事のない場所へ、ゆっくりと沈み込んでゆく太い指。
嫌だと拒絶しながらも、無理矢理に引き出されていく快楽。


「あっ! あ……、くっ! あ、ああっ!」


まるで自分の身体が自分のものではなくなったかのように、与えられる刺激が深まる毎に、ふわりふわりと浮かんでいく意識。
それとは反対に、アイオリアの愛撫に合わせてビクリビクリと快感へと沈んでいく熱い身体。
もう何も考えられずに、抵抗の言葉なのか、それとも、艶かしい嬌声なのか。
アシュリルは熱い吐息の混じった、声にならない声を上げる。


その刹那、それまでに感じた事のない強い圧迫感を感じ、アシュリルはハッとして瞳を開いた。
夕陽の名残が僅かに残る薄暗い部屋の中、アイオリアの爛々と光る獰猛な瞳と目が合う。
ドキッと心臓が跳ね上がったと同時に、信じられない程の質量が、激しい熱を伴って、アシュリルの深い場所へと押し入ってきた。


「あ、り、リア様っ! あ、あ、くっ! あ、あああああっ!」


夢にまで見た、初めての瞬間。
大好きな人と、抱き締め合いながら、一つに繋がり合う至福の時。
なのに、今、この時、アイオリアの心とアシュリルの心は、全く繋がってはいなくて。
溢れ出る涙と悲痛な想いに蝕まれながら、アシュリルはアイオリアの仕掛ける激流に飲まれ溺れていくばかりだった。



→第8話へ続く


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