青空の下で暖かな日差しをいっぱいに浴びながら、青々とした草原に寝転んだ。
目を閉じれば、近くを流れる川のサラサラと水が川底を浚う音さえも聞こえてくる、そんな穏やかな時。
自然の香りに包まれて、私は目を閉じたまま、大きく息を吸い込んだ。
「たまには、こういうのも良いものだな……。」
「ふふっ。サガがこんなところに寝そべってる姿って見慣れないから、何だかおかしい。」
閉じていた目を開き、私は仰向けになっていた身体を僅かに動かして、真横に並んで寝そべるサガを眺めた。
気持ち良さ気に瞳を閉じた横顔。
風に揺られた青い髪が、執務で室内に籠もりきりのせいか、焼ける事なく白いままの肌を擽っている。
いつも眉を顰めてばかりのサガがみせる、柔らかな表情。
こうしていれば、彼だって十分に優しい顔をしているのに。
眉間に皺を寄せた厳しい表情ばかりが彼ではないのだ。
「……何をそんなに見ている、アイリス?」
「ん? 珍しいなぁと思って。」
突然、クルリとこちらを向いたサガが、ジッと私を見つめる。
太陽の光を受けてキラキラ輝く青い瞳が、あの空のように美しくて、私は目が離せなくなった。
「珍しいとは?」
「だって、執務中に休憩を取る事だって稀なのに、今日は『ちょっと抜け出そうか?』なんて言うから……。」
そう、数分前の執務室。
サガと二人きりで山のような書類と格闘していた時。
休憩しようと言い出した私を誘って、ココまで連れてきたのはサガの方だった。
「あまりに思い掛けなくて、吃驚しちゃった。」
「そうか? そう……、だな。」
サガは少し考え込んでから小さく微笑むと、再び視線を上に戻し、目を細めた。
良く晴れた青空に、春の日差しが眩しい。
「たまには良いだろう? 息抜きにもなる。」
「私じゃなくて、サガが、ね。」
空から降る光の輪を全身に浴びながら、私達は二人並んで寝そべって。
こんな時間があっても良いよね。
クスクスと笑いながら、こんな風にサガと笑い合える事は滅多にないから、それが妙に嬉しくて。
高まる気持ちのままに、サガの手を取ってギュッと握り締めた。
サガは一瞬、驚いたようだったけど、直ぐに同じくらい強く握り返してくれた。
「何だか戻りたくなくなってきたな。」
「私も。」
「このまま、今日の仕事はサボるか?」
「良いの?」
「良くはないが……。」
この瞬間、怒り顔のシオン様でも思い浮かべたのだろうか。
苦いと言うか、渋い顔をしたサガが、フワフワと広がった青い髪を、まるでカノンのようにガリガリと掻き毟ったのを見て、私はもう一度、クスクスと笑い声を上げた。
この声に想いを乗せて、空の彼方まで響け
このまま暗くなるまで……。
この空一面に星が見えるような、そんな時間まで。
ココで一緒に寝転んでいるっていうのは、どう?
‐end‐
双子誕が近いので、頭をロス兄モードから双子モードに切り替えようと奮闘中。
しかしながら、甘さが足りないのです。
不足分の糖度は、オリゴ糖でも混ぜて補って下さい(笑)
で、サガは結局、仕事をエスケープしたのか、否か?
どうしたんでしょうね?
2008.05.19
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