デートの終わりに



テーブルへと運ばれてきた食後のスイーツは、鮮やかな春色をしていた。
スプーンに掬い上げたバニラジェラートには、苺のソースがたっぷりと掛けられていて、その華やかな見た目に、アイリスは心を躍らせ、目を輝かせる。
ほんわりしたクリーム色を浸食しながら、トロリと流れて、表面を覆っていく鮮やかで艶やかな赤。
そのバニラとベリーソースの組み合わせが、私の目には妙に色っぽく見えてくるのが不思議だった。


「さてと、夜も更けてきたし、お腹も満たされたし、これからどうしようか、お姫様?」
「どうって……。帰るんでしょう、聖域に。」
「帰る? 折角の休みだというのにかい?」


パクリとアイスのスプーンを咥えたままで、目を大きく見開くアイリス。
大きな瞳で数度、パチクリと繰り返される瞬きの愛らしさに、思わず笑みが零れてしまう私。


「このホテルに部屋を取ってあるんだ。出来れば、無駄にはしたくないんだけど。」
「お泊まりするつもりなの?」
「上層階だから夜景が綺麗だよ。それに、ここのベッドは広くて柔らかくて、とても心地良い。」


浮かべていた笑みを更に深め、目を細めてアイリスを見遣る。
私の視線を受けた彼女の顔は、急激に赤く染まり、まるで初心な少女のように恥じらって、途端に話し声がボソボソと小さくなるのも可愛らしかった。


「べ、ベッドだなんて……。」
「どうせ共寝になるなら、寝心地の良い方がイイだろう? キミの身体に掛かる負担も大きい事だしね。」
「ディ、ディーテったら、そんな露骨に……。」
「露骨? そうかな? 一日のデートの締め括りは、誰だって、ソコに行き着くものだと思うけれど。」


寧ろ、ソコに至るまでの過程、買い物をしたり、お茶を飲んだり、食事をしたり、そのデートの全てが、これから二人きりの部屋で始める濃厚な時間を、より深めるためのスパイスであるのだと、私は思う。
だが、どうやら、そういう考え方は、アイリスには理解し難いようだった。


「やだなぁ。デートの間、ずっと、そんなエッチな事を考えていたの?」
「ずっと、だなんて事はないよ。ただ、私も男だからね、期待はするさ。眠るまでの最後の時間を、どうやってキミと過ごそうか。いや、こうして、ああして過ごしたい。そんな期待をね。期待というより、願望かな。」


顔を近付け、声を潜めたアイリスに倣って、私もヒソヒソと語る。
レストランには相応しくない、内緒話をする二人の、顔を寄せ合う姿を客観的に思い浮かべて、吹き出しそうになるのを堪えながら。
私は笑い出す代わりに手を伸ばし、サラリと揺れ落ちた彼女の髪を、その耳の上へと戻してあげた。
ぴくり、そんな些細な動きにも、敏感に反応する少女のようなアイリス。


双魚宮で共に暮らしていながら、彼女は未だ私からの誘惑には慣れない。
常に顔を出す、その戸惑いと恥じらいが、余計に私を煽り、興奮させているとも知らずに。
それでいて、事が始まれば、しっかりと私を受け入れ、私の期待通りに感じてくれるアイリス。
小鳥がさえずるような嬌声と、強く強く抱き返してくる腕の力。
少女のようで、大人な彼女。


「ねぇ、アイリス。キミは立ったままと、座りながらと、どっちが良い? 私としては、立ったまま後ろからっていうのが、今日の気分なんだけど。」
「あ、あの……、ディーテ? 今、ベッドがどうのって、言ってたじゃないの……。」
「ベッドは二度目のお楽しみさ。まずは、熱に浮かされるまま激しく抱き合いたいんだ。シャワーを浴びながらでも良いし、ソファーに座って向かい合わせに、なんていうのも良いね。」


ニッコリと微笑む私の口から、次々と飛び出す誘惑の言葉。
目を見開いたアイリスは言葉を失って、口をパクパクさせているしかない。
さて、この恥ずかしがり屋の彼女を上手く言い包めて、部屋まで誘導して。
それから、どんな風に味わってやろうか。
アイリスが私の下で艶めかしく喘ぐ様を思い浮かべて、心は益々弾み、身体の奥は益々熱くなった。



さぁ、お楽しみの夜だ



‐end‐





ちょっとだけEROセクシーなお魚様を書こうと思ったら、露骨に卑猥なお魚様になったorz
この感じだと、この後、朝まで数回戦はミッチリ楽しみそうな雰囲気。
お魚様も、蟹さん山羊さんの親友ですからね、それなりに凄いですよね(苦笑)

2015.03.15



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