最初は、いつもと変わらぬ執務風景だったらしい。
一人、黙々と書類の処理をこなしていくサガの目の前で、お茶を飲んだりお喋りしながら執務に取り組む他の黄金聖闘士達。
それでも、仕事自体は普通に進んでいたという。
多少、ノンビリ進めても、手を休めている訳ではないから。


しかし、仕事一辺倒なサガは、その時点でかなりのストレスを抱えていたようだ。
何せこの一週間、睡眠時間は毎日、ニ・三時間程度だったという。
そこにきて、期限間近の書類の山と、一向にやる気を見せない同僚達。
文句を吐いている暇があったら自分が手を動かせば良いと我慢していたものの、そんな我慢も限界はある。


「タイミング悪い事に、そんな時にリアとミロが下らない喧嘩を始めちゃってさ。」
「喧嘩?」
「そ。ミロのお菓子を勝手に食った、食わないで、あーだこーだと言い合い、罵り合い。」


この二人にとっては、いつもの小競り合い的な喧嘩だ、良く執務室で見掛ける光景。
でも、今日のサガには耐え切れなかったらしい、そんな小さな事で言い争う二人に。


「で、突然、立ち上がったかと思った瞬間、リアとミロを何処か異次元の彼方に吹っ飛ばし、『もうやってられん!』と激怒して、自宮に帰っちゃったって訳さ。」


うん、サガがキレたのも良く分かるよ。
いつもいつもそんな状況に耐え忍んで、溜め込んで、溜め込んで。
それが一気に爆発したのが、たまたま今日だった、と。


「だったら、早く謝りに行った方が良いんじゃないの? サガがいないと、どれだけ大変なのか、身を持って思い知ったでしょ。」
「いや、良いんだよ、アイリス。」
「良いって、どうして?」


サガに戻って来てもらわないと、今夜は残業どころか徹夜が決定だ。
なのに謝りたくないだなんて、どれだけ強情なのよ。


「謝りたくないんじゃない。ワザと謝らないんだよ。」
「どういう意味?」
「サガが働き過ぎなのは、アイリスも良ーく知ってるだろ? でも、休暇を取れと言っても、あいつはサッパリ休もうとしてくれないし、だから、これはサガを休ませる絶好の機会なんだ。」


なるほど。
怒って帰ったというのなら、彼等が謝るまでは執務に復帰し辛い。
こういう変なところにプライドが高いサガなら、尚更に。


でも、こんな作戦で、サガはちゃんと休めるのかな?
きっと皆の事と執務の進み具合が心配で、ヤキモキしてるんじゃないだろうか。
返ってストレスを溜め込んでいそう、そんな気さえする。
幾ら激怒したからとはいえ、あのサガが、そう簡単に仕事をスッパリと忘れるなんて有り得ないもの。





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