ポカンと呆けたように私を見ていたアイオリアだったが、ジッと彼を見つめる私の強い視線を受けて、やっと気付いたのだろう。
緊張の糸が切れたように、軽い息と共に小さくフッと笑みを零すと、背中に回していた腕の力をギュッと強めた。


「……んっ。」


強過ぎる腕の力に、私の唇からは苦しみの息が漏れる。
アイオリアの胸板に顔面を押し付けられ、息も上手く出来ない。
だが、それにはお構いなしにググッと力を籠めて抱くと、彼は私の濡れた髪に顔を埋めて、小さく呟いた。


「ただいま、アリナー。」
「んっ……。」


アイオリアの身体越し、耳からではなく、直接、私の身体へと伝わる優しい声。
力強い心臓の鼓動と共に、私の身体に響き全身に流れていく。


「おかえり。」と告げたかったのに、アイオリアに強く抱き締められているせいで、私は声すら上手く出せなかった。
なので、彼に回した手でポンポンと軽く背を叩き、その言葉に代える。
それはちゃんとアイオリアに伝わったようで、彼は腕の力を緩めると、ジッと私を見つめた後、ニコッと微笑んでみせた。


「おかえり、アイオリア。」
「ただいま、アリナー。」


磁石のように引き合う、それは愛し合う者同士の引力。
当然の如くゆっくりと近付いた唇が、ぴったりと重なり合って、世界が突然、甘い色で満たされた。
重なって感じて、そして、確かめたくて唇を開けば、問答無用に浸入されて貪られる。
呼吸なんて出来ない。
アイオリアに唇も自由も奪われて、後はただ絡まり合い翻弄されるだけ。


酸素不足の苦しさに、彼に全体重を預けて、もたれ掛った頃。
そんな私を片手で支えて、アイオリアはおもむろに着ていたアンダーを脱ぎ捨てた。
そして、かろうじて巻き付いていたバスタオルを、私の身体から容赦なく剥ぎ取る。
ギョッとした私の前で自信満々にニッと微笑むと、アイオリアは手にしていたアンダーとバスタオルを、獅子の形に戻っていた聖衣の横に投げ捨てた。


「やっ……、な、何?! 何してるの、アイオリア?!」
「シャワー浴びていたのだろう? 俺も汗だくでな。風呂に入りたいと思っていたところだ。」
「……て事は、何? もしかして、一緒に入る気?」
「無論。」
「やだ、恥ずかし……、んんっ!」


抵抗しようと手を突っ張った私を容赦なく引き寄せて、半ば強引に唇を合わせるアイオリア。
結局、キスされたまま抱き上げられた私は、先程、自分が付けた雫の道標を辿る彼に連れられて、再び浴室へと戻っていった。



熱いシャワーの中で、貴方が誓った愛の言葉は甘く



こうして彼が任務に出る度に、切ない想いを噛み締めて。
無事を祈りながら、眠れぬ夜を数え明かして。
それでも、私はずっと帰りを持っているから。
だから、戻ってきたその時は、「ただいま。」と笑顔で言って。
ね、アイオリア。



‐end‐





獅子誕前に練習で一本と思い、書いてみましたが。
どうも最近、(エ)ロス兄さんの影響が強いのか、暴走傾向にあるウチのニャー君。
最近、リアにはEROが似合うと思い始めた自分の頭が末期に違いないです(滝汗)
この調子でいくと、獅子誕夢は本番を書きそうな予感大^^;

2008.08.15



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