心の中では、何処か甘えがあった。
こんな事を吐露してしまったところで、アリナーは「バカね。」と言って、否定してくれるだろう。
そう勝手に思い込んで。


だが、実際には俺の危惧した通りだったのだ。
アリナーはこんな俺よりも、ずっと大人で、ずっと頼れて、ずっと男らしい兄さんの方が好きなのだ。
悲しい事に、俺は彼女の中では『二番目』でしかなかった、そういう事だ。


「なぁに? 捨てられた子犬みたいな顔しちゃって。」
「そ、それは……。」
「嫌なのでしょう? 私がアイオロスのところへ行ってしまっては、貴方は嫌なんでしょ?」
「だが、君は兄さんの方が……。」
「本気でそう思っているなら、そんな顔はしないで。分かるでしょ、アイオリア。」
「アリナー……。」


俺を見上げるアリナーの顔には、苦い笑みが浮かぶ。
スッと腕を伸ばして、その小さな両手で、俺の両手首をギュッと掴んだアリナー。
そこから伝わってくる手の温度、その熱いくらいの温もりに、凄くホッとしている自分に気付いた。


「私は大人なアイオロスの横にいるよりも、子供みたいなアイオリアの世話をする方が好きだから、貴方と一緒にいるんだけどな。」
「ほ、本当か? 本当にそう思っているのか、アリナー?」
「勿論。じゃなきゃ、付き合ったりしないし、ましてや一緒に暮らすなんて有り得ないわ。」


ミロがヒューと口笛を鳴らし、カミュがホッと大きな溜息を吐いた。
だが、そのどちらも俺の耳には届かない。
今は目の前の彼女――、どうしようもなく子供な俺を、優しい笑顔で受け入れてくれるアリナーの事だけに、目も耳も五感の全てが傾いていたから。


「よし。じゃあ、仲直りのチューだ!」
「な、何を言ってるんだ、ミロ! だ、大体、俺とアリナーは喧嘩などしていない!」
「良いじゃん、この際、何だってさ。兎に角、ラブラブな証拠にチューの一つもしておけって。」
「し、しかし! アリナーが嫌がるかもしれんだろ……。」


突然、俺達の間に割って入ってきたミロが、背中をバシバシと叩いて、とんでもない事を言い出す。
思わず横目で彼女の表情を盗み見た。
が、キョトンとした顔で俺とミロを交互に眺めやって、それから、弾けたように声を上げて笑うアリナー。
それを見て、今度は俺がキョトンとする番だった。


「やだなぁ。私が嫌がる訳ないじゃないの、アイオリア。だって、私は貴方の彼女でしょう。キスは勿論、その先だって……。」
「だ、だが、アリナーは全然、そんな素振りも見せなかったじゃないか。」
「私はずっと待ってたのよ、これでも。アイオリアより四つも年上だとしても、こういう事はやっぱり男の人からリードして欲しいもの、ね?」


パチリと上目遣いで魅惑的なウインク。
その愛らしさに、クラクラとしてしまう俺。
ミロとカミュが目の前にいる事も忘れ、込み上げる愛しさに思わずギュッと彼女を抱き締めていた。


「おおー!」
「良かったな、アイオリア。」


二人からの祝福の言葉も、この耳には遠い。
気持ちが昂ぶっている今なればと、ココが教皇宮である事すら忘れて、無我夢中でアリナーに口付けていたのだから。



彼女とのファーストキス
待ちに待った、その瞬間



これからは少しでも男らしく、彼女をリード出来るように努力しよう。
でも、やはり暫くは、遠慮がちになる日々が続くだろう事は否めないだろうが。
だが、まずは今夜だ。
そう、今夜こそは……。



‐end‐





純情系リアではなく、あくまで優柔不断系のリアを目指して書きました。
リアは、年上女性に対しては凄く遠慮しそうな雰囲気があるのでw
なので、このリアは純情だから手出し出来ないのではなくて、年上女性に遠慮してしまって手出し出来ない、そんな感じです。
よって大人な行為はバッチコイ(死語)なリアですよ、なのに、手出し出来なくてムラムラ悶々してれば良いとか思ったり何だりしてました、スミマセン(苦笑)

そんなこんなで、お誕生日おめでとう、アイオリア^0^

2012.08.16



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