「こんな予定じゃなかったのに……。」


背中を向けブツブツと小言を呟く私に、苦笑交じりの笑みを零しながら、アイオロスは優しく髪を撫でてくれる。
その感触が心地良くて、思わず許してしまいそうにもなるが、そうはいかない。
それでは、なし崩し的に誤魔化されただけになる。


「聞いてるの、アイオロス? 私は怒っているのよ。」
「そう言われてもなぁ……。」


日本に来てからの半月、それは働き詰めの毎日。
今日はアイオロスの誕生日だからと、特別にアテナ様が下さった休日だったのだ。
久々の休日、一年に一度の特別な休日。


「折角、日本まで来たのに、まだ何の見物もしていないのでしょうから。」


そう仰って下さったアテナ様の言葉を無駄にしないためにも、今日は張り切って午前中から出掛けようと、色々と準備もしていたのに。
観光名所を巡っても良いし、買物に行くのも良いし、美味しいものを食べるとか、アイオロスと二人で目一杯、楽しもうと決めていたのに。


「ほら、あの雪だ。アンディだって、外には出たくないだろ? 寒いし、冷たそうだし……。」


未だベッドの中で上掛けに包まり不貞腐れている私に向かって、アイオロスは満足しきった笑顔を投げ掛ける。
だけど、いつもと同じ太陽のような笑顔の中に混じるのは、今の今まで続けられていた激しい行為の名残を映した艶っぽさ。
汗を掻いて額に薄っすらと張り付く湿った髪も、その甘い笑顔に滲み出る色気を妙に引き立てていて。
何だか、ちょっと腹が立つ。


「こんな事なら、日本になんて来なきゃ良かった。」
「どうして? 一人で聖域に残っているより、二人でこうして温め合える方が、ずっと良いじゃないか? 雪が降ってくれたお陰で、いつもより激しくアンディと抱き合えた事だし。何なら、もう一回くらい――。」


そう言って、スッと細められたアイオロスの、その視線の色っぽさときたら。
毎日、毎晩、その視線を受け続けて、すっかり慣れている筈の私ですら、ゾクリと震えが走り、グラリと深い目眩を感じる程。


「もう! だから来なきゃ良かったって言ってるのよ! これじゃ、身体が持たない!」
「はははっ! アンディを怒らせてしまったか?」


怒った振りをして上掛けを引き上げ、頭からスッポリと中へ隠れた。
怒りもホンのちょっとはあったけど、本当はアイオロスの見せる魅惑的な表情に、何度も何度でも参ってしまう自分に気恥ずかしくなったから。


でも直ぐに、アイオロスがガサガサと上掛けに潜り込む音が聞こえてきて。
あぁ、またさっきの繰り返しだわと溜息を吐きつつ、既に熱くなっていた私の身体へと伸びてくる彼の手の感触に、この心は再びドキドキと高鳴っていた。



真白な雪景色を傍目に、熱過ぎる愛を交わすの



今日は一日中、このベッドの中から抜け出せないに違いない。
だって、今日はアイオロスの誕生日、求められるなら応じたいもの。
でも、明日、私はちゃんと動けるのかしら?
それだけが心配、大いに心配。



‐end‐





一日早いですが、ロス誕記念夢です。
何とか頑張って(エ)ロスさんにご登場頂きましたw
しかし、ここ最近、当サイトでは生誕記念夢はERO夢が定番になりつつありますが。
誰が決めた、そんなルール?!(お前だろ;)
でも、まぁ、ロス兄さんなんで、(エ)ロスは外せないでしょう!

2009.11.29



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