溜息、困惑、茫然自失



「失礼します。アイオロス様、いらっしゃいますか?」


恐る恐る訪れた、人馬宮のプライベートルーム。
正直、ココには一人で足を踏み入れたくなかったというか、出来れば別の女官に行って欲しかったというか。
だが、この書類を持って人馬宮に行けと命じられたのは私。
仕事なのだから、文句を吐いたところで仕方ない。
私は渋々、教皇宮からココまで降りてきた。
でも、やっぱり……。


「お、アナベル。一人? そうか、遂に俺の子を産む気になったか。」
「ち、違いますっ!」


顔を合わせば、いつもこの通り。
セクハラ紛い(いや、確実にセクハラで決定)の言葉を掛けられて、辟易している私。
いつもいつも他の人の目がないのを良い事に、「俺の子を産んでくれ。」とか「俺の子を産むのはアナベルしかいない。」とか、やたらと私に子作りを迫ってくる。
聖域の英雄と呼ばれ、皆に信頼されて、憧れを抱かれて、強くて格好良くて、申し分のない好青年なのだから、普通に「付き合って欲しい。」とか、「君が好きだ。」とか言ってくれるのならば、それはそれは心がトキメクのだろうけれど。
何が嬉しくて、このような露骨な言葉に受け答えをしなければならないのか。
はぁ、溜息。


「アイオロス様。ハッキリ言わせてもらいますけれど、それはセクハラです。」
「セクハラ?」
「アイオロス様は私をからかって楽しんでいるだけかもしれませんが、言葉を掛けられた方は快く思えないという事です。」
「心外だなぁ。俺の本気のプロポーズを、セクハラだなんて言われると。」


は?
今、何て仰いましたか、この人?
プロポーズ?
プロポーズって、結婚したい相手に告げる言葉ですよ、ね?


「そ、それが、どうして子作りとか、そんな言葉になっちゃうんですかっ?! 普通、プロポーズって、結婚してくださいとか、お嫁さんに来てくださいとか、そういう言葉じゃないんですかっ?!」
「だって、結婚して嫁に来てもらうのは当然で、俺が本当に望んでいるのは、アナベルと家族になって、アナベルと家族を作る事。つまり、子作りって訳だ。俺はアナベルと子作り行為がしたいんだ。」
「だ、だからっ! それがセクハラだって言っているんです!」


誰か、この方に『言葉を濁す』必要性を教えて上げてください!
折角の、とっても嬉しい筈の瞬間が、吃驚するくらいに台無しになってしまったじゃないですか!
素直な気持ちを伝えたいという、その思いは十分に分かります。
極論を言えば、最終的にはそこに向かうのが結婚なのだけれど、だからといっても、これは無しでしょ。


「そうそう。昨日、寝室のベッドマットを新調したんだ。子作り環境には最適だと思うんだけど。何だったら、アナベルの好きなように、部屋の調度を変えたって良い。間接照明でムラムラする雰囲気にするとかさ。女の子は好きだろう、薄ぼんやりした照明が。あ、ベッドに天蓋とか着けてみる?」
「本当に、いい加減にしてくださいませ、アイオロス様……。」


再び溜息の私を見て、「折角、幸せが目の前にあるんだから、溜息なんて吐いてちゃ駄目だぞ。」なんて、アイオロス様は明るい声で笑っているけれど、その溜息の原因が間違っても自分だとは思わない神経の太さ。
だからこそ、この特殊な聖域という空間の中、英雄でいられるのだろうか。
なんて、そんな事をぼんやりと考えてしまったのが運の尽き。
気付いた時には、ニコニコ笑顔の彼に横抱きにされて、半ば強引に奥の部屋(多分、寝室)へと拉致されてしまったのだった。



悪夢のようなプロポーズ



(さてと。子作り、子作りっ。)
(ええっ?! まさか、本気ですか?!)
(当然だろ!)
(え、や、ちょっと、待ってください!)



‐end‐





セクハラ全開なロス兄さん^^;
EROモンスター、ロス兄さん^^;
彼は長くこの世に居なかったので、ぼかした言い方とか遠回しな物言いとかが全く出来なかったら、どうなんだろうと妄想を働かせた結果、プロポーズすら露骨セクハラ発言になってしまうという、悲惨な結果に辿り着きました(滝汗)
オブラート、何それ、美味しいの?
そんな素直過ぎるロス兄さんは、(色んな意味で)世界一危険な人物だと思いますw

2014.11.13



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