小春日和の誘惑



眩しい程の陽射しが差し込み、窓辺へと近付いた。
ここのところ、ずっと気分の滅入る曇天が続いていただけに、晴れた空を見れる、ただそれだけで、嬉しい気持ちになる。
冬との境目にある晩秋の空気は、昼間であっても肌寒かったが、私は迷わず窓を大きく開き、新鮮な空気を目一杯吸い込んでいた。


「……アイオロス?」
「ん? あぁ、アンディ。」
「何してるの? 寒くないの?」


開けた窓の直ぐ隣にはテラスがあった。
そこに佇んでいた人影は、勿論、ココが私達の寝泊りしている部屋である以上、アイオロス以外には有り得ない。
だけど、その格好が……、何というか、これ以上ないくらいに『彼らしい姿』だったのだから、私は一瞬、自分の目を疑ってしまった。


「久し振りにスッキリ晴れたから、陽の光を浴びたくてね。」
「だからって、服を着ていないのは、どうかと思うけれど。今、何月だと思っているの?」


そう、今は、もう十一月の半ば過ぎ。
あと少しでアイオロスの誕生日も訪れるという、寒さが強まる季節だ。
しかも、ココは日本、城戸邸。
ギリシャなら兎も角(いや、聖域も山奥であるからして、そこそこ寒いのだけれども)、季節の移り変わりが激しいこの国で、上半身裸のまま外に出るとか、彼の頭がおかしくなったとしか思えない。
見下ろす庭園は、紅葉も既に終わりが近かった。


「ちょっと我慢すれば平気さ。」
「平気じゃないわよ。」
「平気だって。日光浴には、やっぱり素肌を晒してないと。アンディも、どう?」
「馬鹿な事を言ってないで、早く入ってきて。風邪を引くわ。」


と言いつつも、実のところ、私の心配は、彼の体調云々よりも、城戸邸の使用人、特にメイドさん達に見つかってしまうのではないかと、そればかりだった。
これだけ長く、しかも、何度もこの屋敷に滞在するようになって、最近では彼が、見た目も中身も格好良い他の黄金聖闘士達とは何処かが違う、特に、同じ教皇補佐のサガ様と比べて、明らかに『おかしい』と噂になっているようなのだ。
つまりは、アイオロスの奇人変人っぷりが、彼女達にバレつつあるという事。
だから、こんな姿を見られてしまう事だけは避けなければ。
アイオロスは良くても、私が恥ずかしくて、この先、邸内を顔を上げて歩けなくなる。


「ちょっとヒヤリとして、気持ち良いんだけどなぁ。」
「ちょっとどころじゃないわ。本当に風邪を引いちゃう。聖闘士なんだから、身体が一番、大事なのよ。」
「じゃあさ。俺がキミの言葉に素直に従って部屋に入れば、アンディが別の気持ち良い事、してくれるのかな?」


彼の言葉の意味が分からず、少しの間、首を捻っていた私だったが、僅かに遅れて気付く。
こちらを見るアイオロスの目が、楽しそうに孤を描いていながら、その瞳の奥には、隠し切れない色気が滲んでいる事に。


「昨夜は忙しくて、お預けだったからな。俺が風邪引かないよう、冷えた身体を温めるのも、アンディの役割だろ?」
「ば、馬鹿っ! 半裸のまま、ずっとそこにいて、風邪でも何でも引けば良いんだわ!」


ワザと乱暴に窓を閉め、部屋の中を横切っていく私を、追ってきたアイオロスが強引に引き留めて、抱き寄せた。
顔が埋もれた彼の胸は、予想以上に冷え切っていて、これで気持ちが良いなんて、よくも言えたものだと思う。
だけど、冷え切った指先が私の項(ウナジ)に触れた瞬間、呆れでいっぱいの気持ちは一瞬で掻き消されてしまって。
不思議と身体の奥に灯された官能の火が、メラメラと勢い良く燃え始めていた。



いつだって貴方は誘惑的



冷えた肌が私の身体に触れる度、ゾワリと駆け上がる奇妙な快感。
初めから、これが狙いだったのかも……。
そう気付いた時には、もう遅く。
その頃には、力を漲らせたアイオロス自身が、嬉々として私の中に進入を果たしていた。



‐end‐





普通に爽やか兄さんを書こうと思っていたのに、いつの間にか、いつもの(エ)ロス兄さんに仕上がっていた不思議(苦笑)
そして、教皇服兄さんを書く予定が、気付けば脱いでも凄い兄さんを書いていた不思議(苦笑)
どんなシチュでも、最終的にそういう雰囲気に持ち込む辺り、ロス兄さんは流石、ERO魔人ですw

2013.11.17



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