憂鬱シンドローム



ちょっと気分でも変えようかと思い、煙草と携帯灰皿を片手に外へ出た。
自宮の真ん前、見晴らしの良い階段の一番上に腰掛けると、おもむろに咥えた煙草に火を点ける。
たっぷりと吸い込んだ煙を、フーと空に向かって吐き出せば、痛いくらいの青空に薄い雲みたいに煙が掛かって見えた。


「あ〜……。」


意味もなく声を出す。
その声も、煙と同じように空の彼方へと広がり、そして消えた。


「やる気出ねぇな、チクショー。」


アイツが居ないだけで、こんなにも世界が変わるもんなンだな。
何もしたくない。
何も手に付かない。
何にも興味が湧かない。
この煙草すら、今は美味いと思えない。


どのくらい経ったか分からないが、随分と長い事、そこでボンヤリ座っていたように思う。
途中、俺の横を通ったサガが、あからさまに嫌な顔をして、俺を睨んでいった。
神聖なる十二宮、しかも己の守護する大事な宮の前で、だらしなくプカプカ煙草など吸うな。
そう言いたげに、鋭い視線を向けてきたが、俺はサラリと無視して、そのままそこに居続けた。


「早く帰って来いよな、アリア……。」


口に出してしまえば、抑えようもなく想いが膨らみ、更に大きくなっていく心の隙間。
あぁ、言わンきゃ良かったと、柄にもなく後悔なンかしたりして。
たった一人の女相手に、浮いたり沈んだり。
俺とした事が、一体、どうしちまったンだ?
こんなにも、自分以外の誰かを深く想うなんてな。
いつの俺が知っていただろうか。


「あと四日か、五日か、一週間か……。」


待ちきれない、アイツが帰ってくる日まで。
早く帰って来いよ。
そればっか繰り返し思う、情けない俺。
いつから、こんな女々しい男になっちまったんだろうな。



薄い煙草の煙のように、この心の中に雲が掛かった



それもこれも全て、アリアに出逢ってからだ。
アイツが俺の全部を、持っていきやがった。



‐end‐





憂鬱に沈んだ蟹さま。
こんな蟹さまも良いかなぁ、と。
恋人さんは女神のお世話係か何かで、一緒に日本辺りに滞在中。
なかなか帰って来ない彼女にヤキモキしたり、一人寂しかったりしているのです。
そんなお姿も素敵な蟹さま(笑)

2008.05.23



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