外に出ると、イルミネーションの灯りが視界の中で滲んだ。
アリアは目をパチパチと数度、瞬かせると、直ぐ前を歩く男の後ろ姿を眺めた。
服装はラフでシンプル、黒のシャツにグレーのジャケット、細身のベージュパンツ。
だけど、白いうなじに掛かる後れ毛が、妙に艶めかしい。
時折、銀色のその髪に、横を通り過ぎていく車のヘッドライトが反射して、プリズムみたいな不思議な色合いを映し出す。
透明のようでいて、赤や青や緑や、七色の光が艶やかな表面を滑っては消える髪。
アリアはそれが、とても綺麗だと思った。


「なンか食いてぇモン、あるか?」
「私は別に……。」
「遠慮すンなよ。俺のおごりだ。」
「でも、私はお腹減ってないから。」


あ、そう。
その言葉と共に、僅かにアリアを振り返り見る視線。
夜の街灯りに浮かび上がる紅い瞳の、なんと魅惑的な事だろう。
街灯の光が滲む『紅』は、まるで上物のワインのようだ、深く濃く芳醇な……。


「ホテル・グラードヒルズで良いか? あそこのイタリアンは文句の付けようがねぇからな。腹が減ってねぇなら、オマエはドルチェでも食ってろよ。」
「それもおごり?」


当たり前な事を聞くなと言いたげに、男の右眉がグイッと持ち上がった。
そういうクセのある表情が、また魅力的なのだ。
独特なニヤリとした笑みや、冷たいようで情熱的な流し目なども。


「はぁ……。」
「ンだよ、その溜息は?」
「何でもない。」
「変なヤツだな。」


背後からだけならば、スタイルが抜群に良いが、極普通の青年に見える。
だが、少しでも振り返ると、もう駄目だ。
そこかしこから溢れる魅力というか、色気というか、男性的なセクシーさに、意識の全てを持っていかれてしまう。
それだけの力が、彼にはあった。
世界に二つとない瞳の色もそうだが、その独特でいて多彩な表情。
そして、不必要に開いたシャツの隙間から覗く、白い肌と逞しい胸の筋肉。


「メシが終わったら、ジックリ楽しませてやるよ。」
「……え?」
「そのために来たンだろ? 二人きりで、今度はオマエだけのためにシャワーショーをしてやるよ。なンなら、さっきみてぇに腰振って、踊ってやってもイイぜ?」
「や、で、でもっ……。」
「遠慮すンなって。報酬は、そうだな……、オマエの身体。オマエが俺を見て楽しんだ分は、たっぷりと身体で返してもらう。本より、そのつもりで来てンだろ? えっと、アリア、だったか?」
「っ?!」


メシ食い終わったら、そのままホテルに泊まり決定な。
そう言って、男は今までで一番の深い笑み、ニヤリと右の口角を吊り上げて笑った。
その紅い瞳には、溢れんばかりの情熱の色を湛えながら……。


夜の街に飲まれ、夜の気配を謳歌する。
ホンの一時でも彼の色に触れたなら、多分、もう二度と抜け出せない。
甘く苦く、深く浅く。
刺激的でありながら柔らかに捉える夢。
彼の魅力は『夜』そのものだ。



‐end‐





ダラダラ続きそうだったので、この辺で無理くり終わらせてみましたな感じが満載です(苦笑)
食事の後の話は、各自、お好きなように妄想してやってください。
ただし、確実に夢主さんも行水ダンサーさせられますよw
だって、絶対に一緒にシャワー浴びるだろうからさ、腐ってもデスさんだから!

2013.12.30
〜2014.01.16



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