「ミ、ミミッ?(な、何してるんですか?)」
「ミャ、ミャミャン。(何って、ナニだ。)」
「ミ、ミミッ、ミミミッ!(そんな、だって猫なのですよ、今は!)
「ミ、ミャン。(関係ない。)」
「ミ、ミッ!(あ、ああっ!)」


背後に圧し掛かったシュラ様を押し退けようと、アレコレもがいた私だったが、ガッチリと押さえ付けられていて、それは叶わなかった。
それどころか、巧みにじゃれ付いてくる彼に甘く耳を食まれたり、徐々に抵抗する力が抜けていく。
だけど、簡単に屈する訳にはいかない。
何とか言葉で止められないかと声を掛けても、いつもながらに噛み合わない会話。
しかも、その間に、アッサリと彼に事を遂げられてしまった。


「ミ、ミ、ミミッ!(あ、あ、嫌っ!)」
「ミャ、ミャッ。(嫌じゃないだろう。)」
「ミミ、ミ、ミミッ!(だって、猫なのに!)」
「ミ、ミャミャン。(猫だって良いものは良いだろうが。)」
「ミミッ!(ああっ!)」


こうなってしまっては、抵抗どころか、為す術もなく流されるしかない私。
猫同士の行為でも、人の時と変わらず感じるものなのだと、そんな事を心の片隅で思いながら、ズルズルと快楽に飲まれていく。
結局、猫の姿での行為という有り得ない状況により、普段よりも一層、強まった激しい快感に耐えられず、私は途中で意識を失ってしまった。



***



――ガバッ!


起き上がった私は、全身に汗をグッショリと掻いていた。
手の甲で額の汗を拭う。
生温かい汗の温度、触れる肌の感触、全て人間のものだ。
次第に暗闇に慣れてきた目で見下ろす自分の身体は、大丈夫、猫ではなく人の姿。
やはり先程までのアレは、全部、夢だったのだわ。
ホッと安堵の溜息が漏れると同時に、シュラ様の事が心配になる。


もう一度、目を凝らして辺りを見回した。
真っ直ぐ横の枕の上、クルンと丸まって盛り上がった黒いシルエットが見えている。
寝る前に確認した時と同じ、そのままの体勢で眠っているのだろう。
音を立てないよう、そっと近付いてみると、黒猫姿のままのシュラ様がそこに居て、スースーと寝息を立てていた。


やはり夢だったのだわ。
シュラ様が人間に戻って、代わりに私が猫になってしまったのも夢。
シュラ様も私も猫になって、このベッドの上で、あ、あんな事を致してしまったのも、同じく夢の中の出来事。
でも、夢とはいえ、あんなエッチな事をしてしまうだなんて……、私は欲求不満にでもなったのだろうか。
いや、そんな事は有り得ないわ。
だって、昨夜もシュラ様は情熱的で、一回じゃ終わらなかったし……。
って、一人で恥ずかしい事を思い出して頬を染めているなんて、何をしているのだろう、私は。


照れを隠すように、眠るシュラ様の頭から背中に手を滑らせた。
滑らかで艶やかな毛の感触が、手の平に気持ち良い。
ピクリと小さく反応して、それでも目を覚まさないシュラ様だったが、撫でられる心地良さは寝ていても分かるのだろう。
丸まっていた身体が伸びて、今はお腹までみせている。


私はクスッと小さく笑うと、ベッドの足下へ移動し、今度はそこに寝ていたアイオリア様を一頻り撫で回した後。
再び、ベッドの中へと潜り込んだ。
お腹を見せたまま眠りこけるシュラ様と向かい合い、微笑ましい気持ちのまま目を閉じる。
今度は、あのような変な夢を見る事はないだろう、そう思いながら。



→第7話へ続く


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