「で、アンヌ。どうするんだ、結局?」


やっと落ち着いた様子で、膝の上で丸まったアイオリア様の小さな頭を撫で回しながら、ミロ様がボソリと呟いた。
色々と外からの目もある事だし、アイオリア様とカプリコちゃんは獅子宮で面倒を見ようと連れ出した筈が、結局、こうしてまた磨羯宮に大集合となってしまったのだから、問題が逆戻りしてしまった状態。


「アイオリア様もカプリコちゃんも、ココで預かります。それが一番、安心ですから。」
「だが、そうするとアンヌの負担が大きいのではないのか?」
「アイオリアは兎も角、あの雌猫もとなると、なぁ……。」


ミロ様がチラとキャットタワーの方へ視線を送り、それに釣られてカミュ様と私も視線を向ける。
カプリコちゃんはスッカリ夢の世界の住人(住猫?)になってしまったようで、タワーの真ん中、猫の巣箱からニュッと黒い前足だけが枝のようにはみ出して伸びていた。
なんて無防備で可愛いのだろう。
あの前足を指でツンツンしたい、可愛い……。


「あの姿を見てると、平気そうだなぁ……。」
「いや、だが、心配は心配なのだ。やはり数が多過ぎる。」
「平気です。カプリコちゃんは手の掛からない賢い猫ちゃんですもの。」


以前、アイオリア様の留守の時に数日、カプリコちゃんを預かった事があるが、あの子は本当に手の掛からない良い子だった。
あの強面で自己中のシュラ様とも、最終的には仲良くなった事ですし。
まぁ、その際に、色々あったには、あったけれども。


「あのキャットタワーがありますから、遊びたければ勝手に上ったり下りたりで遊ぶでしょう。眠くなれば、あのように一人でもスヤスヤ眠っています。後は時折、イケメンさんに擦り寄る事さえ出来れば、大人しく満足してくれますよ、カプリコちゃんは。」
「……イケメン? 何の事だ、それは?」
「カミュ様には言っていませんでしたか? カプリコちゃんはイケメン好きなのです。」


アイオリア様の事を一方的に気に入って、獅子宮に住み着いちゃった猫ちゃんですから。
獅子宮を訪れる聖闘士、特に黄金聖闘士に可愛がられて、毎日、幸せに暮らしている。
頻繁に様子を窺いに来るデスマスク様には、特に懐いていますしね。


「執務が終われば、またデスマスクの奴が手伝いに来るのだろうな。それまでは、我々で見守りを続けよう、ミロ。」
「見守りってか、監視だろ。コイツ等、ホント自分勝手だし、また脱走でもされたら困るからなぁ。」
「監視というのは大袈裟ですが、脱走は困ります。」


私はグリグリとシュラ様の小さな頭を撫でた。
彼は「ミャミャ。」と声を上げ、避けるように頭を動かすが、私の膝の上から下りる事はしない。
喜んでいるのか嫌がっているのか微妙な反応だわ。
という訳で、グリグリ撫で撫でを強制的に続ける。


「ミミャッ!」
「何ですか、シュラ様?」
「ミミャ、ミミャミャッ!」
「余所者は帰れ〜、とか言ってんじゃないのか? シュラの事だから。」
「言っているんですか、シュラ様?」
「ミャッ!」


シュパッと右の前足を上げた後、その通りだと言わんばかりに小さな頭でウンウンと頷く。
本っっっ当に、猫ちゃんになっても自己中ですね、シュラ様。
非常事態(の割にはマッタリしてますけど)なのだから、一日くらい我慢して欲しいものです。


「駄目です。」
「ミミャッ!」
「駄目です。今日はアイオリア様もカプリコちゃんも、多分、デスマスク様も、この宮にお泊まりです。」
「ミギャギャッ!」


はいはい、勝手に騒いでいてください。
シュラ様が何と言おうと、これは決定事項ですからね。
無駄ですよ、無駄。


シュラ様をソファーの横に下ろすと、お茶を淹れにキッチンへと向かう私。
キッチンへと入る前に振り返って見れば、ミロ様の膝の上に丸まったアイオリア様に向かって、怒り心頭の黒猫ちゃんが、「ミャーミャー!」と無駄な威嚇をしている姿があった。



→第8話へ続く


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